津次郎

映画の感想+ブログ

わたしたちの言う大人よりもふたまわりほど大人っぽい パドルトン (2019年製作の映画)

パドルトン

4.0
Mark Duplassは独立系映画にしばしば見る俳優で「クリープ」で名を馳せた。
POVホラー映画で2014年に初作、2017年に続編が撮られている。
クリープは後発なPOVでありながら、見せるアイデアを持っていた。Mark Duplassは主演に加えスクリプトを書いてもいる。俳優というより多芸な映画人の印象がある。ジャックレモンを野暮ったくした感じの外見にも味わいがある。
出演作としてThe One I Love(2014)やSafety Not Guaranteed(2012)を記憶している。

Paddleton(2019)は監督との共同だがMark Duplassが書き、主演も兼ねている。他にRay Romanoという俳優が出ているが、ほぼその二人しか出てこない。
ゆるいコメディタッチだが死ぬ話である。
つまりおっさん二人が出ずっぱりの死ぬ話である。

主題は当惑するほど重い。にもかかわらず後味はさわやかですらあった。

Paddletonは終始まったり展開する話で、喝采も哀泣も歓笑もないが、脚本には驚きがあった。その驚きは人間の達観の度合いに対するものだ。

比較する脈略はないのだが、分かり易くするために比較すると、日本映画にこんな大人な脚本はない。ライフスタイルが違うからというより、やはり達観の度合いが違うからだと、個人的には思う。邦画には死がドラマチックに描かれない立地はあり得ない。

ただし映画全般と比べてもPaddletonの死生観には驚きが伴う。驚きと言っても叫喚するやつじゃなく静かな動揺で、それが大人な脚本の根拠だが、この際の大人とは、日本人が指し/使う大人よりふたまわりほど大人っぽい。個人的には見たことがない達観だった。