津次郎

映画の感想+ブログ

子役がアンダーソン色を中和 ムーンライズ・キングダム (2012年製作の映画)

4.0
大きすぎるウェリントンがいつもズリ落ちそうなシャカウスキー。
顔の左右バランスがちょい違う、ベラみたいな青シャドーのスージー。
子役二人が魅力的です。

シャカウスキーは小っちゃなコーンパイプを吹かしています。
暑くてもずっと縞柄尻尾付のウシャンカかぶりっぱなしです。
里親にも見放された孤児で、情緒不安定、カーキスカウトの嫌われ者です。

スージーは釣り針とコガネムシでつくったイヤリングをしてます。
シャカウスキーがつくって貫通させました。
あれはマジで痛そうでした。
いつでも双眼鏡を首から提げてます。
双眼鏡はスージーのマジックパワーです。

ディティールがアンダーソン監督ならでは。きりが無いほど細部がつくりこまれています。それがアンダーソン監督の風趣だと思います。役者たちは膨大なセットの中でクレイアニメみたいな、わざとらしい演技をします。小津安二郎の遠縁なのは、なんとなくですが──解ります。今日を生きてMITかなにかに留学してたらこんな映画をつくったに違いない──と思わせます。

西洋の家庭にある大きな家のおもちゃ、内部にはミニチュアの人がいて、内装から何から、キッチンのこまごまとしたツールに至るまで、総てが小っちゃく再現されているおもちゃ。アンダーソン監督は私にとってあのイメージです。

犬ヶ島やブダペストの情報量には圧倒されましたしダージリンのペーソスも染みましたが、どれかと言えばこの過去作がいちばん好きかもしれません。
演技が作り物っぽいところがアンダーソン監督の魅力ではあるものの──それって結構、観るのに波長を合わせてしまう気がするのです。
でもムーンライズは子役だから、つくってない表情、演技じゃないしぐさにシンパシーを感じることができた──ということかもしれません。

ラストできれいに消化されるタイトル。
かわいい映画です。