津次郎

映画の感想+ブログ

バイオレットエバーガーデンじゃないぞ ヴァイオレット・エヴァーガーデン (2018年製作のアニメ)

1.0
なまいきなレビュワーですが逆張りはしません。(世間様の大多数意見にたいしてワザとあまのじゃくな意見をすることはありません。)(したところでなんの影響力もない過疎レビュアーですし。)

日本じゅうどころか、せかいじゅうの人々がほめているヴァイオレットエヴァーガーデンに感興しなかったので、そのりゆうを書きました。なんかの、だれかの、参考になればと思います。

ヴァイオレットは、人間的感情を失っています。
さまざまな登場人物と出会うなかで、じょじょに凝り固まった気質が溶解し、ヒューマニズムと愛を理解するにいたる──そんな話だろうな。と1話で思いました。

そのとおりの話でした。それゆえ1話からプロセスの消化試合でした。
そんなわたしにとってヴァイオレットは「ぶりっこ」のブランディングをしている女子アナウンサーのような人でした。

いちいち媚びや品をつくるあざとい女子アナにたいしてわたしは「おまえそれワザとやってるよな」と指摘したくなります。それとまったく同じ気持ちで、いちいち軍隊口調になるヴァイオレットにたいして「おまえそれワザとやってるよな」と言いたくなってしまった。──のでした。

これは物語の性質上、ひじょうにしつれいで不謹慎な気持ちです。ヴァイオレットは武器として扱われ、戦って人間的感情をうしなった傷痍軍人ですから、そういう痛ましく、つらい経験をした人にたいして「おまえそれワザとやってるよな」はないです。

だけど、こころに傷を負った少女の設定がわかり、代筆をつうじて愛を取り戻す──との想定内に入ってしまった物語ゆえ、そこからぜんぶの出来事が、くどすぎる裏付けに見えてしまうのでした。ヴァイオレットの丁寧口調も「こころに傷を負ってますよ」のアピールに聞こえてきてしまう──のです。

わたしはかのじょの行動のたびに「きみが少佐命なのはもうわかったから」と言いたくなりました。「了解しました」などの言動のたびに「軍隊出身だから軍人口調なのはもうわかったから」と言いたくなりました。

しょうじきなところ、うっとうしい女でした。

物語として、とうぜんのことですが、すべてのエピソードがヴァイオレットの目的へ話をもっていこうとしていました。すべての登場人物が超能力者のようなヴァイオレットの理解者でした。

それらのヴァイオレットのキャラクター以前に、この話の世界ぜんたいがヴァイオレットというキャラクターを生み出すためにすさまじい軋み音をあげていました。むりやりにヴァイオレットと愛へ着地させようとしていました。わたしにとってかんぜんに無理な設定でした。

言いたいことが伝わるかどうかわかりませんが、プペルにおけるハロウィンの仮装みたいな無理感です。プペルってどこの国なんでしょうか?なんでいきなりハロウィンで、なんでハロウィンに仮装しているのでしょうか。この惑星でハロウィンに(意味も知らず)仮装するのは日本の渋谷だけです。ハロウィンの仮装にプペルが交じっているから物語がはじまるわけだけど、それではじまらなけりゃ、いったいプペルはどんな普遍の上に立てる物語なのでしょうか?

ヴァイオレットエヴァーガーデンの世界は(個人的に)もっとすごい無理感でした。国籍、時代、服装、顔立ち。なんしろヴァイオレットエヴァーガーデンですよ。まるで下妻物語の竜ヶ崎桃子の頭んなかを具現化しちまったような世界でした。ひらひらの衣装着せたいし、えう゛ぁーがーでんとかぶーげんびりあとかヨーロッパの名前がかっこいいし、青い目のほうが萌えるし、こころを閉ざしている子に同情心わくし──といった短絡的発想によって成り立っている世界──にしか見えませんでした。

なんしろ少女ヴァイオレットは武器として戦場で戦闘をした──ということになってました。
するってえとこの少女は人型の戦闘用機械かロボットで戦場に投入された、のだろう──と予想していました。
そうじゃなかったです。
するってえとこの少女は奴隷かなんかの境遇でむりやり前線にかりだされた、のだろう──とも考えました。
そうじゃないようです。
つーかよくわかりません。

むりやりにしろ戦闘用ロボットにしろ戦場に出すならもっと屈強なにんげん(たとえば男)のほうが有益です。ふつうにかんがえて少女は戦場で意味を為しません。なんで生身の少女が戦闘員として大の男たちをねじ伏せられるのか。武器として扱えって──なんで人間扱いされてないのか。・・・。

(ウィキペディアに
『大戦中はライデンシャフトリヒ陸軍の女子少年兵であり、ギルベルト直属の部下として単独で一個分隊に匹敵する戦闘力を持っており、「ライデンシャフトリヒの戦闘人形」の渾名で恐れられていたが大戦時の戦傷で両腕を失う。』
と書いてあり、よけいにわからなくなりました。義手はどんなしくみで十指を動かせるのか。なぜ少女が「単独で一個分隊に匹敵する戦闘力を持って」いるのか。強引に飲み込ませる設定としては(個人的には)突拍子がなさすぎでした。

つーか、たんどくでいっこぶんたいにひってきするせんとうりょくて・・・どこの小学生なんだよ。

ファンタジー・つくりばなしなのは知っています。でも、どんな話・世界にも物理があります。ジェミーが力持ちなのはバイオニック(サイボーグ)だからです。非人間的パワーを説明なしに設定するならたとえばドラゴンボールみたいにもっとファンタジーにすべきです。よくもまあひょろひょろの少女をなんのロジックもなしに「単独で一個分隊に匹敵する」とか言ってしまえるもんだなと思いました。パラシュートで降下して弾よけながら雪原を疾走できるんですわこの子。終話だと走る列車の上が静寂につつまれていて、そこで会話をします。で、列車のうえで大人の男たちを倒しまくります。

つくった人に加えて見た人も敵にまわすつもりはさらさらありませんが、そっちょくに言ってよくもまあこんな設定を呑めるもんだな、とも思いました。)

ヨーロッパ風の世界観ですが代筆業者さんたちがひじょうに自由奔放で無国籍なファッションをしていました。時代監修をしながら時代監修をないがしろにする──とでも言うようなふしぎな被服でした。それとカトレアはすさまじく不自然な胸元でした。泣かせようとしている主題にcleavageサービスが出てくるのは変でした。

以上、せかいが泣いた──ヴァイオレットエヴァーガーデンにまったく感興できず。という話でした。中二ってより小五のメルヘン。辛気くさくてひたすら鼻白んだ。泣ける?・・・笑わせないでくださいよ。
(わたしはこのアニメのしんずいをまったく理解しておりません。)

(アンチとかじゃなくそっちょくな感想です。ちなみにおなじ京アニの聲の形は素晴らしかったです。聲の形のレビュー)