津次郎

映画の感想+ブログ

暗殺者養成所 キル・ボクスン (2023年製作の映画)

キル・ボクスン

3.1

殺人請負会社MKにつとめるベテランの暗殺者。
表向きはシングルマザー。
殺人と子育て。
矛盾するふたつを両立させようと奮闘するボクスン(チョンドヨン)。

MKはランク別の暗殺者を擁し若手の育成もやっている。
受注した依頼は作品と呼ばれ、一見したところはほとんどアイドルプロダクションのよう。

プロットはソジソプが出演していたある会社員を思わせたが“会社の仕事”に加えて思春期でゆれうごく娘との葛藤が絡む。ボクスンはいい母親であろうとし、稼業をひた隠しにしているのだった。・・・。

Netflix配信日にリマインドしておいたやつだし、見ごたえあるノワールだったが、あちらはノワールの宝庫なので、満足度は平均的だった。
日本映画だったら絶賛(というか偶然のいいできに驚きをおぼえる)するところだが韓国映画なら及第という感じ。
チョンドヨンとソルギョングの豪華Wキャストに当て込み過ぎた。

とある自殺見せかけ殺人の依頼でボクスンが道理に逡巡するところからMKは混迷へ向かっていく。
殺人請負会社の暗殺者が殺人を道義と非道義に峻別しているのは変だが、そこから得意のめくるめくノワールへ堕ちていく。

ボーイッシュな暗殺見習い役のイ・ヨンがいいかんじ。
韓ドラには、元気よくソンペ(先輩)と言い、いつでもどこでもソンペソンペと慕ってくるかわいい後輩がかならず出てくるが、本作のイ・ヨンはそれだった。

親の心配をよそに子は案外ふてぶてしく育つものだ──というところに帰結して、殺人と子育てというキーワードを巧くまとめた。

冒頭、ファンジョンミンのたどたどしい日本語からはじまったので嫌な予感がしたが嫌日シーンはほぼなかった。
が、10万ウォン札が出来たら誰(を肖像)にするか?というディベートテーマの候補に安重根があがった。

ところで(余談だが)韓国映画をレビューするとき独特なところに立脚していることに気づく。
じぶんは政治的ではなく明瞭な左右はないが左系発言に嫌悪することが多いのでだいたい保守だろうと思う。
ところがレビューをしているときは日本映画をはげしく罵倒する。
韓国映画をレビューするときは韓国を疎ましく感じながらも韓国映画を褒め、やはり日本映画を腐す。
先日亡くなったノーベル賞作家の受賞演説が「あいまいな日本の私」だったが、言い得て妙。
まったくのところあいまいな日本の私だと思う。
因みに作家は左で大人になるにつれ読まなくなったが、若い頃わたしは日常生活の冒険を文庫がぼろぼろになるまで愛読したものだ。