津次郎

映画の感想+ブログ

ドラマのドヨン イルタ・スキャンダル 〜恋は特訓コースで〜 (2023年製作のドラマ)

イルタ・スキャンダル 〜恋は特訓コースで〜

4.0

陰謀論が好きな友人がよくする話題に3S政策というのがあった。民衆をスクリーンとセックスとスポーツに夢中にさせて公への反抗心を削ぐというもので、今の日本における韓国エンタメに似ている。

婦や工の話題を聞いてもまた韓国かと思うだけで特別な怒りにはならない。それというのも日常的に韓国エンタメに接しているから──という理屈はばかばかしいだろうか。エンタメと国家間の話が峻別されていると言えるだろうか。

ネットフリックスの上位を韓国映画/ドラマが占め、韓製アイドルに熱狂し、大統領夫人のプラスチックな容貌さえ萌え文脈になる。

じっさいに日本の庶民は韓国エンタメに骨抜きになっているのであり、芸能の拡充と輸出に懐柔の意図がないとは思えない。

韓国映画/ドラマのほうが日本製よりはるかにクオリティが高い。ならば、その熟達した技量で反日の映画orドラマをつくったらどうなるか。

竹島や日本海などの表記に日本人でも韓国人でもない人が関心を持つだろうか。ぎゃくに、たとえばわれわれ日本人はスンニ派とシーア派の対立について精確な知識や判断や興味を持っていますか。

VODを通じ世界中に輸出された韓国映画/ドラマで、日本人が韓国人をいじめていたら、第三者国の人々はそれを鵜呑みにするだろう。それでもかれらの芸能に国策的意図がないと言えるだろうか。

言ってみれば信心でお金をすくいとる話題の教会の方法論と同じ。それゆえ少なくともエンタメはたんなるエンタメと、他のものとは区別して認識したい。という話である。

双方の国の街頭で、博愛な若者がハグしましょう看板を掲げたら、そこでは感動的な景色が繰り広げられるだろう。そんなことは当たり前である。

人間が個として平和や博愛を願っているのは普通なことで、そのことと国家間の駆け引きとは関係がない。

エンタメに魂を奪われたとて、あなたとわたしはまったく異なる人間です──という認識は必要だ。外交はお人好しでは困るという話である。

──てな感じで、まいど韓国映画/ドラマのレビューに際して、負け惜しみのようにこんな前口上をする。

策略にはまるもんかと反発心を持って見ているつもりなのに、毎度はまる楽しさと得体の知れない敗北感。・・・。

──

映画女優な印象のドヨン。
ドラマがめずらしいので見た。

ドヨンといえば苦労する女、苛酷な宿命の女、男尊女卑or封建主義に捲かれる女──というイメージが固着しているので、軽いドラマの軽いドヨンに見たい感があった。

また共演のギョンホは軽くソウルレスな優男のイメージ。重くて演技派なドヨンと対照的で、なおのこと興味がそそられた。狙ったキャスティングではなかろうか。

まじめにひたむきに生きている低所得者と裕福な完璧主義者の恋愛。シチュエーションを換えたら韓ドラぜんぶにあてはまりそうな貧女とツン男のラブコメ。

ドヨンは惣菜屋をやっている。さまざまな苦労を乗り越えてきた。弟は重篤なアスペルガーで義娘は受験をひかえている。

人生の労苦が降りかかってくる感じとその悲哀はチョンドヨンの得意とするところでサクッともっていかれた。

ジョンホは有名数学講師役だが摂食障害がある。だがドヨンのとこの惣菜はぜんぶ食べても無問題なのだ。役作りでほんとに痩身をつくっているのがすごい。

少女時代へさかのぼって現在にいたるまでをやるがそれが巧くてグッとくる。
韓ドラ特有の貧しくても真面目に一生懸命生きている感じと、そういう純朴女が、偏屈な潔癖症な男と諍いながらも交わっていく感じ。と、義娘の学園の人間模様。役のユンソは透明系で爽やか。

明るい印象のラブコメでいくのかと思えばノワール値も被さってくる。シリアスな運命が絡んでくる自在さも韓ドラらしい。(まだ3つしか見ていないが。)

しっかし人も絵もきれいに撮るよね。