津次郎

映画の感想+ブログ

転生するワンコ 僕のワンダフル・ジャーニー (2019年製作の映画)

僕のワンダフル・ジャーニー (吹替版)

3.7

1月2日(2024年)羽田空港でJALエアバスと海上保安庁の小型旅客機の衝突事故があった。JAL側は乗客乗員379人が脱出したが海保側に5名の死者が出た。

この事故は、後に、貨物預りのペット2匹の救出に失敗したことの報告と謝罪があったことで、犬猫愛好家がヒスをおこして本題はそっちのけで論争、炎上した。

2023年の10月、秋田県の町で作業所に立てこもった熊を駆除したところ、全国から町への抗議が殺到した。

えてして動物至上主義者は辛辣だが、人命が優先されるのがいやならおまえがシねよっていう話になる。そこまで極端なことじゃないと思うかもしれないが、優先順位とは生きるか死ぬか──であり、同伴搭乗をさせないのも、人里に出没した熊を殺処分するのも、安全を担保すること=人が死ぬのを避けるために他ならない。

それでも犬猫愛好家の一部には、人間に対する迫害には無関心にもかかわらず、動物へのそれに対して激昂するタイプの輩がかならずいる。
戦争や災害には無反応なのに、戦地や被災地に残留した犬猫の話をもってくると、がっつり食いついて“助けてあげて”とか言い出す。おまえが助けにいけや。

動物を飼っていない人から見たとき、このタイプが“飼い主”全般のイメージを形成してしまうことがあるし、また案外看過しやすいことだがペットを飼うことは中産階級以上の嗜好品だ。低所得者は家族やじぶんを食わすのが精一杯である。

前述したニュースはこういった“飼い主”のイメージを補強する。動物愛好家ってのは優先順位もわかんない中産階級なんだろうな──と思わせる。偏執な人種だと思わせるんだ。

ひるがえってペット映画も人間への愛が注がれないと片手落ちになる。かえりみてペットに主眼がきて人間が描かれない映画は埋もれている。

おそらく僕のワンダフル・ジャーニーは犬も人間もしっかり描かれた成功例だろう。

imdb7.4、RottenTomatoes51%と91%。

鉄板の人気作で、上記の如くトマトメーターとオーディエンススコアが乖離するタイプの映画だってことがよく理解できる。メロドラマだし犬がしゃべるんだから批評家は嫌うだろうさ──という感じ。RottenTomatoesには想定内の言い分が並んでいる。

ちなみに前作僕のワンダフル・ライフ(2017)も同様にトマトメーターが下げオーディエンススコアが上げる値になっているし、名作HACHI約束の犬(2009)もそのような値になっていて、概してこれはペット映画の宿命であろうと思った。

僕のワンダフル・ジャーニーは魂が転生していく犬の話だが、じぶん的には男は選ぼうね──という話であり、ネグレクトでも犬との共生が人を育てる──という話でもあった。

犬は狂言回しで、本質は人間のドラマ=CJ(キャスリン・プレスコット)の成長物語になっている。CJは真実の愛を見つけ、母親との確執も乗り越えるが、それを助けガイダンスするのが転生していく犬たち──という仕組み。大衆をターゲットにしたDreamWorksな出来映えだった。

トレント役のヘンリーラウがいい人っぽいのでめでたしめでたし感が充足されることに併せて、この映画がとりわけ日本(やアジア)での人気が高いのはアジア人男性と白人女性の睦まじい2ショットが見られるからではなかろうか。

ちなみにヘンリーラウの血筋は中国で国籍はカナダで居住は韓国。KPOPアイドルから出発したミュージシャンで歌はもちろんピアノもヴァイオリンもプロ、英語韓国語中国語広東語の4ヶ国語を話すそうだ。

余談だがCJの少女期を演じたAbby Ryder Fortsonが主演する青春コメディAre You There God? It's Me, Margaret.が2023年4月の公開から絶賛されている。が、日本公開(またはVOD配信)は未定のようだ。