津次郎

映画の感想+ブログ

湿度と衛生管理 ファミリー・アフェア (2024年製作の映画)

2.8

ミスト噴霧器の伏線があるのだが日本人には解りにくかった。海外にお住まいの方、もしくは住んでいた方なら解るのかもしれないが、あっちのスーパーマーケットの生鮮売場にはミスト噴霧器がついている。農産物にみずみずしい見た目を与え、かつ鮮度を保つための霧らしい。90年代に噴霧器を介してレジオネラ菌が流行って、システムは厳しく規制、メンテナンスされるようになった──そうである。が、乾いているよりも濡れているほうが非衛生な感じがするしカビだって生えやすいのではないだろうか。日本は湿度が高いから──ということもあるだろうが、素人目にはやっかいなシステムのような気がしてならない。

クリス(ザックエフロン)はスターなのでスーパーマーケットへしばらく行っていない。秘書のザラ(ジョーイキング)を買い出しに行かせて言った台詞「青果コーナーのミストが懐かしい」と言うのがエンディングで回収される。
スーパーマーケットに行っていないクリスにザラはオレオの種類がすごいことになっていると報告する。多種のテイストが販売されているということだが、そういや外国人の日本のお土産ナンバーワンはキットカットだというのがどこかに書いてあった。日本のお菓子は繊細な味がするので増えまくりのインバウンドで高需要を保っているらしい。たしかに外国の大雑把な味のお菓子と比べると日本のお菓子は繊細な味がする。が、なぜか外国の大雑把な味のお菓子を食べたくなることもあるんだよな。

そんな前半、映画は楽しい。が、だんだんキッドマンの顔の人工的造形が気になりはじめる。もう57歳(2024年)だし、じゅうぶんにきれいだが、なんとなくアップデートの痕跡が気になる。キッドマンが「思っていたキッドマンの顔」をしていたのはAustralia(2008)のあたりまでだと思うが、そんなことを思ううちにエフロンだって結構な変貌であることが気になりはじめる。だいたい体つきからしてぜんぜん違う。17歳に戻って人生をやり直すっていうベタ設定のセブンティーンアゲイン(2009)というのがあったでしょう。さらさら髪のボブで涼しい目差しでガイジン好き女子がキュン死にするタイプの好青年だった。それがどうよ、この肉体改造。顔も丸から角になったし。エフロンは2024年現在36歳だそうだが、キッドマンは若作りだしエフロンは老けて見えるし、年の差カップルという気配はまるでなかった。

そうやって「思っていたのとちがう」二人が気になりはじめると、なかなか話に集中できない。とは言ってもジョーイキングはナチュラルだし、キャシーベイツはどこに出ていようともいつものキャシーベイツなのでキッドマンとエフロンの変貌ぶりを中和する効果はあった。またザラの親友Eugenie役を演じたLiza Koshyの自然体も良かった。
情報によるとLiza Koshyは登録者数1,680万人の「Liza Koshy」と登録者数700万人の「Liza Koshy Too」を持つ、再生回数30億回超のフォーブスリスト入りYouTuberだそうだ。桁すげえな。

けっきょく映画はブルック(キッドマン)とクリスの恋愛模様がなければよかった。そこが主軸なので皮肉にきこえるかもしれないが、たんにわがままなアクションスターとその秘書のコメディにしたほうが冴えていた。ていうか、キッドマンの顔とエフロンのステロイドが気になって、それが終わりまで拭えなかったというのが率直なところ。もちろん顔を変えるのは自由だが、老いにあらがっている人は(当然だが)老いにあらがっているように見えるものだ。

この映画は年の差カップルという設定なのにキッドマンに配慮してそれが前面にでないようにしてある。そうなると女優は──いつまでロマコメができるのか──というメグライアン的ジレンマに陥ってしまう、ていう話。

imdb5.5、RottenTomatoes42%と33%