津次郎

映画の感想+ブログ

エノーラ・ホームズの事件簿(2020年製作の映画)

エノーラ・ホームズの事件簿

3.0
もともと少年を思わせるミリーボビーブラウンが少年に化ける。
粗野で快活、端正で聡明、器用で大胆、フレッシュで好ましく、強く勇敢。──物怖じしないキャラクターもさることながら、演技気配がなく、まさに女優──居るだけで、映画に躍動を与えていた。

冒頭から、開放的で美しい緑の佳景。──そこをエノーラ(ミリーボビーブラウン)が自転車を駆っている。さいしょからカメラ目線で観衆へ話しかける。
ありがちな手法でもミリーボビーブラウンがやると、鮮やか。
畳み掛けるようなスピード感。──それを、ずっと維持する。

二人の兄はフィリップスウィフトとクラークケント。冷淡と理知。──とても巧い。
きれいな景色。きれいな人々。きれいな英語。めまぐるしいカット。ロジカルなエディティング。完璧な時代考証/衣装監修。瑕疵のないディティール。──すさまじい潤沢さの予算を感じさせた。しみったれたところはひとつもなかった。

が、マイナス要素はまったく見当たらない──ものの、個人的にはやや健全すぎた。謎解きもあんがい面白みに欠ける。と思う。撃たれたけれど、金属板を着けてた──ってのも、想定内の常套手段だった。

また、けっこう、スピード感=テンポをミリーボビーブラウンに依存してるのが、解ってしまう。逆に言えば、演出を救ってしまう凄い女優だった。

たくさんのカメラやスタッフの前で「素」ができる。──それは年代にも因っている、と思う。ファニングやワトソンやモレッツや、あるいははちどりやエイスグレイドやジョジョの子らのように、美しい素は、若年層だけがもつ、刹那の輝き──であると思うからだ。

個人的見解にはややひねくれ──がある。明るい、まっとうな、いい映画だった。