津次郎

映画の感想+ブログ

未来環境でのハードボイルド探偵物語 レミニセンス (2021年製作の映画)

レミニセンス(字幕版)

2.6
舞台が未来環境になっているハードボイルド。主人公バニスター(ジャックマン)はさながらフィリップマーロウだが仕事は探偵ではなく時間遡行の案内人。とはいえ美しい依頼人と謎が絡んでくる。オリジナルのようだがチャンドラーの翻案みたいな話になっている。

幾つかの大戦と海面が上昇した近未来。
街は水浸しでヴェネチアのようにボートで往来する。その雰囲気はいい。

物語は探偵ものを踏襲してバニスターの独白が随所に挿入される。深い低音域のあるジャックマンのナレーションはいいが、意欲的な外観の未来とは裏腹に、あんがい陳套な探偵話が展開する。

バニスターはマーロウのようにストイックではなく、美しい依頼人メイ(ファーガソン)に、溺れ、のめりこむ。
探偵ものには美しい依頼人が付きものだが、女を追う体になっていることで、ハードボイルドが失速した。

そもそもSFと恋愛とディテクティブストーリー、ぜんぶ入れようとして散漫になった。
結果、批評家からも酷評を浴び、tomatoesでは36%と37%、imdbも6点に届かなかった。ボックスオフィスも爆死している。

監督はTVシリーズのウェストワールドのクリエイターと紹介されていたが映画は初めて──とのこと。
本作だけではなんとも言えないが巧い演出ではなかったと思う。

批評家たちはとくに既視感(過去の映画で見たような絵面)をあげていた。

『バラエティ誌に寄稿したオーウェン・グレイバーマンは映画を「過去に観たことがあるものを完璧に調整した2時間の蜃気楼」と表現し、「『ブレードランナー』のようでもあり、『ゴッドファーザー』のようでもある。ビルや路地が残る水浸しのマイアミの風景は、『ウォーターワールド』や『ハンガー・ゲームシリーズ』の続編を思い起こさせる」と批評している。』(ウィキペディア、レミニセンスより)

とか、

『シカゴ・サンタイムズのリチャード・ローパーは2/4の星を与え、「『チャイナタウン』に向かう『バニラ・スカイ』のどこかで、『マルタの鷹』と『インセプション』が出会ったかのような独創的で野心的な作品だ。しかし、荒々しくて複雑な、そして最終的に失望させられるSFノワール『レミニセンス』は、あちらこちらへ進んでいくが、最後にはレールを外れてしまう」と批評している。』(ウィキペディア、レミニセンスより)

とか、言われていた。

個人的には記憶をいじる要素に「記憶探偵と鍵のかかった少女」(2014)を思いうかべた。いずれにしても既視感過多な映画だった。

ハードボイルドな探偵ものを未来設定でやった映画──といえばブレードランナーだが、思えばブレードランナーは1982年の映画なわけである。今(2022)となっては40年も昔なのだった。その光陰に愕然となる。