津次郎

映画の感想+ブログ

天才少年 ザ・ブック・オブ・ヘンリー (2017年製作の映画)

Book of Henry [DVD] [Import]

2.8
ヘンリーは所謂ギフテッド。頭脳明晰、株式売買で不労所得があります。頭がいいだけでなく、博愛精神の先覚者でもあります。学校のMy Legacyの発表「生きている間にベストを尽くして幸運を人々と分かち合いたい」と述べます。街で見かけた乱暴されている女性を助けようとします。虐待されている隣家の女の子を救おうとします。が、脳腫瘍が見つかり半尺あたりで死んでしまいます。

ヘンリーが亡くなってからは話も映画じたいも混迷してきます。肝心のヘンリーの本が用立ちしません。おぼろ気な存在で、何が書かれていたのか殆ど明かされません。また、スナイパーライフルや貯水ダムなど、飛躍した素材に混乱させられます。女の子もかなり偶発的に救われます。そもそも、結果として実行しなかったとしても、殺害しちゃうのは行き過ぎですし、そもそもヘンリーが亡くなってしまうことで転倒しています。

本国では大こけで批評家の批判もそこに集中していました。聖ヴィンセントを彷彿させるコンビで豪奢な装丁でしたが、外している映画です。ただしJaeden Lieberher改Jaeden Martellとナオミワッツなので、とうぜん見所は多数あります。

サラシルバーマンはスタンダップ兼女優で物議発言でけっこう話題になりました。アメリカの女性コメディアンをよく知りませんでしたが、今はスタンダップをネットフリックスで見ることもできます。シュレシンガーみたいなきれいで頭の回転が速く性的魅力の打ち出しが強いひとが、するどいこと、はしたないことを言います。
男性同様、女性コメディアンも女優になると、そうとう伸びる傾向があります。kristen wiig、レベルウィルソン、メリッサマッカーシー、エイミーシューマー。脇役でもけっこう持っていく人たちです。
シルバーマンは来歴も発言もけっこうヤな奴ですが映画的には申し分のない女優です。この映画のような蓮っ葉(はすっぱ)なウェイトレス、あるいはashby(2015)のサッカーマムみたいな役はぴたりと一致していました。

鳶が鷹を生むと言いますか、掃き溜めに鶴と言いますか、Gifted(2017)のように、ある種粗雑な親のもとで天才児が育つのはドラマチックで映画的だと思います。すなわちサスペンスにしなくてもJaeden Martellとナオミワッツ、Jacob Tremblayまで揃っているなら、半分完成しているようなもの──だったわけです。それを筋書きで混濁させたゆえの失敗だったと思います。