津次郎

映画の感想+ブログ

遭難者救出ドラマ インフィニット・ストーム (2022年製作の映画)

インフィニット・ストーム

2.6

imdb5.2、Rottentomatoesのトマトメーターはなくオーディエンスが55%だった。手堅そうなプロダクションでナオミワッツなのに低い評価・・・に興味そそられて見た。

山岳救助ボランティアのパム(ナオミワッツ)が遭難者を助け出す話。

おそらく低評価の理由は自殺志願者を助けたから。

救助のニュースのたびにヤフコメなどで盛り上がる自己責任論がある。富士山に軽装で登って動けなくなって救助要請した──みたいな顛末だと、非難ごうごうになる。身勝手な遭難者に対する処罰感情は膨れやすい。

この映画で救われたジョン(Billy Howle)は結果的に自棄的な考えを捨て去ってパムに感謝することになるが、長時間に及ぶ救助の道中は自棄になっているのであり、自棄になっている人間を救おうとすることほど無駄骨折りなことはない。

その壮大な無駄骨折りが描かれることでいちじるしく評価をさげている。最終的に美談になるとはいえジョンはパムに迷惑をかけすぎている。観衆は謂わば“そんな死にたがっている奴ほっとけよ”の気分になってしまい感興が削がれたというわけ。

しかも這々の体(ほうほうのてい)でようやく麓の駐車場にたどりついたところでジョンはパムにお礼すら言わずに車で立ち去ってしまう。
出発から十数時間に及んだ命がけの救助活動が無に帰すような格好になり、その胸くそで大いに興醒めした。

ただしMałgorzata SzumowskaとMichał Englertのコンビ監督は実績があり、山中の状況描写は手堅かった。
パムは子供ふたりを事故で失っていて、そのフラッシュバックがたびたび挿入されることもヒロインの輪郭を浮き彫りにしていた。
また、概して女性のアルピニストはがちむちではなく骨張った体躯をしているがワッツはその趣をまとっていてリアリティもあった。

が、上述したように実話とはいえ共感しにくい話が評価をさげた。

Rottentomatoesで見つけた短評にも──
『長めのエピローグでようやくこの......いくつかの文脈が説明されるのだが、『インフィニット・ストーム』が納得のいかない冒険を超えた目的を明らかにするには遅すぎた。』
──というのがあり、結論として丸くおさめたとしても、救助活動の徒労はスポイルできなかった。

山の嵐はいずれ止む。下山することでまた救助されることで、嵐から逃れることもできる。だがパムもジョンもその心(内界)に愛する人の喪失をかかえている。それは謂わば止むことのない無限の嵐(Infinite Storm)のようなものだ。そう考えたとき、外界には止まない嵐はない。乗り越えられない嵐はない。──と言いたい映画だったと思うが、そんな気分にはならなかった。