津次郎

映画の感想+ブログ

二番煎じ search/#サーチ2 (2023年製作の映画)

search/#サーチ2

3.3

Aneesh Chagantyのデビュー長編のSearching(2018)はPOVの終焉かつ革新だったと思います。

ブレアウィッチプロジェクトやRECやパラノーマル~などが開祖になっているPOVという映画手法があります。

低予算/短期間/少人数のPOVは濫用され猖獗をきわめました。次々に亜種が発明されCloverfieldやEnd of Watchなど大資本映画にも使われました。その熱狂を冷まし終わらせたのがSearchingだったと思います。

きょうび出演者がカメラを回しているというPOVの体裁で撮られる映画は無くなりました。出尽くしたからでもありますがSearchingがつくられてしまったからだ──とも思います。Searchingは全シーンがモニター内の謂わばアイデア全部入りPOVでした。

たんにモニター画面が筋を語るだけでなくサスペンスな緊迫と家族のほっこりをPOVという「枷」の中で描ききっていました。

きっとご同意いただけると思いますがSearching(2018)はすごい映画でした。

本作は言ってしまえばSearchingの二番煎じです。
NicholasDJohnsonとWill Merrickのコンビ監督で、Aneesh Chagantyはストーリーを担当しています。サーチ2と邦題されていますが繋がりはなくキャストと筋を変えたSearching類似品でした。

二番煎じかつChaganty監督ではありませんが、よくできていました。

インターネットとビデオ通話とCCTVとGPSとインターネット仲介サービスとアーカイブでデスクに居ながらにして謎が解明していく様子、それらがPC画面上で表現されるのは相変わらず見事でした。サスペンスを経て家族のほっこりへ落とすのも同じでしたが上手にできていました。

コンビ監督はいずれもRunやSearchingの編集者だそうです。Searchingや本作は編集によるところが大きいと思います。PC画面で話をつむいでいくわけですから、むしろ監督より編集ではないか──とも思います。本作が高クオリティなのはモニターPOVの肝が編集にあるからでしょう。

ただし(個人的には)ヒロインがふてぶてしくて好ましさを感じられませんでした。親の旅行中にパリピするくせに、親が行方不明になると怯懦になる感じもいやでした。

おそらくこれはSearchingの娘役Michelle Laの好感度と対比したからかもしれません。Searchingの“父”John Choと“娘”Michelle Laとあのラストシーンには最高にほっこりさせられました。あの傑作がある以上、比べたり二番煎じになってしまうのは仕方がないと思います。

rottentomatoesは87%と90%、imdbは7.1。個人的にSearchingの二番煎じという見方だったので、海外評が思っていたより高く意外でした。

おそらく英語圏の評価が高いのは彼らが英語のPCを触っているからだ──と思います。
PC画面を表示したときそこにある総ての言葉を日本語字幕にすることはできません。要所だけ翻訳して、それで話が解るにしてもモニター画面がストーリーを生成するなら、英語圏の人の方が理解に有利です。矢継ぎ早に検索される文字列を追えるなら、この映画がもっと楽しめたのかもしれません。

なお、00年代/10年代の韓国映画で何度か見たダニエルヘニーが出ていておやっと思いました。

余談ですが、今の社会、事件にはつねにやられ損を感じます。
殺人やその未遂、暴行や窃盗、詐欺やわいせつやハラスメントやいじめ・・・、なんであれやられたほうは生涯に残る心の傷や資産の損失を負いますが、やったほうは人権に守られ、軽い処罰や短い懲役で出てきたり、ばあいによっては民事不介入によって何のお咎めにもなりません。
もはやネットなどを駆使して自分で解決策を探る時代なのかもしれません。犯罪から逃れたり、行方不明者を探すなんてのは既に自分でやることになったのかもしれません。そんなことを思いました。