津次郎

映画の感想+ブログ

シンデレラ(2021年製作の映画)

シンデレラ

1.5
imdb3.6/10だが、ここでは4/5(8/10)の傑作あつかいだった。
ちょろいマーケットだなあ日本て。

Camila CabelloといえばHavana。つっても、そのていどしか知らないが。にしても何十億回という視聴回数の動画を配信している、超ビックなシンガーなのは知っている。アメリカや中南米では、かんぜんなアイドルにちがいない。それこそCamila Cabello主演だけで、映画がつくれるほどの。──というわけで出来上がった映画がCinderella。

アイドル映画らしく、かんぜんにベタなシンデレラの物語が再現されている。かつミュージカル。ピアースブロスナンも歌っちまう。アマゾンオリジナルで推薦年齢対象7歳+。そんなお約束かつ子供向け映画ゆえimdbの評点が3.6になった。国内5点制に換算すると1.8です。

ところが日本の映画レビューサイトだとクオリティが反映されない。フィルマで4です。10点制に換算すると8です。imdbで8といえば完全な傑作です。これ傑作ですかね?

もちろん大前提として、映画なんて誰がどう見ようと勝手です。さらにこの映画は目くじらたてるようなもんじゃない、7歳の子供に対して必要充分で、たのしい映画です。
どう見ようが勝手ゆえに個人的な意見を述べさせてもらっているわけですが、曲がりなりにも映画レビューサイトでレビューするならクオリティを検証すべきではないでしょうか。

とはいえ、外国映画に辛辣評をしない日本人の気持ちはわかります。日本人には外国人(主に白人、ラテン)に対するコンプレックスがある。で、この映画には、この惑星で凄まじい人気を誇っている外国人様が出ている。人気の外国人様に追従しておかないと、なんか「わかってないやつ」みたいに見えてしまう。で、評価点が上がる。の仕組み。

たとえば、せんじつネットフリックスで見たHe's All That(2021)。
主演のAddison RaeはSNStiktok)によって人気を得たアイドルとのこと。新世代アイドルらしく20歳にもかかわらず官能方向の属性がある。エロかっこいいというやつ。で、映画はimdb4.4/10。フィルマでは3.7/5(7.4/10)でした。

わたしはテレビシリーズ「親愛なる白人様」のレビューにこう書きました。
『平生、だれも一言も漏らさないが、日本人は、すさまじいまでの白人コンプレックスを抱えている。テレビはハーフタレントだらけ。ハーフとはいえ片方はゲルマンかスラヴ、混成だとしてもムラートではなく見た目が白人な人しか好まれない。いっぱんに整形手術とはアジア人らしさを払拭しアングロサクソンにちかづける手術のことだ。

なんならこのサイトの「ユーザーを探す」をクリックすれば、そこに居並ぶ人々は(たぶん)日本人でありながら揃いも揃って白人が出てくる映画を推している。嘘でも冗談でも針小棒大でもない。日本人向けの日本語の映画レビューサイトにおいて、ほとんどの人たちが白人の映画のファン──なわけである。(わたしもです。)にもかかわらず、みな白人好きの習性を露呈しない。にっぽん男子たるもの、揃いも揃って、おれはAngela Whiteなんて知りませんよ──てな涼しい顔をして生きている。

YouTubeでよくある動画だが、日本のおいしい料理・美しい場所・他国にない事やモノ・独自性のある習慣などを紹介して驚嘆する──ってのがある。
で、その紹介はかならず白人の女がやる。きれいな白人の女が、モニタリングの女子高生のように驚嘆することによって、動画に価値が生まれる。
それがどういうことか──というと、日本の事・モノを白人の女に褒めてもらうと、日本人はうれしい──ってことである。ばかっぽい。が、現実にその構造をしている。』後略。

日本では萌えが評点化されます。
かんたんに言えば「かわいけりゃいい」ってこと。
これは見る側だけの観点じゃない。作る側のイニシアチブにもなってくる。
たとえば、21世紀の女の子というオムニバス映画。もはや言うまでもないけど、21世紀の女の子の前提は「若い女性がつくったのだから許してね」である。あるいは池田エライザの夏、至るころ。あんだけ百姓くさい*のに佳作あつかい。

日本では、たとえば「美術館女子」のように「エロス資産」によって、無能な若い女が救われる萌えバイアスが社会を覆っています。
男は年収1,000万でも難色されるのに、女は家事手伝いでもじゅうぶんに泳げる社会なわけ。おっさんなってみりゃわかるけど、根本的に言ってしまえば、男なんて死ぬか隠れるように暮らすか、しかないもんね。──底辺なじぶん自身の歯ぎしりによって話が逸れたので元に戻しますが、日本人は、外国映画に対して、その萌えバイアスに白人コンプレックスが加算されます。拙作が怒濤の高評価を得てしまうのは、そんなわけです。

ただし萌え+コンプレックスの他に、とても不遜な話だけど、個人的には、imdbと国内レビューの乖離について、日本人には鑑賞眼=リテラシーが足りないんじゃなかろうか、と思ってしまうことが(かなりひんぱんに)あります。
(文系な人の独り言:映画の理解力って、ものの価値がわかるか、わかんないか──に繋がってしまうことのような気がする。)

(*わたしは田舎の百姓なので百姓くさいが差別用語にあたりません。)
imdbおよびフィルマの値は2021/9月初めの値)