津次郎

映画の感想+ブログ

全年齢向け ジャングル・クルーズ (2020年製作の映画)

3.3
昔ヴェルナーヘルツォークを履修しようとしてそのたび挫折した。フィツカラルドを見て何年後かにカスパーハウザーを見てつぎはアギーレ神の怒りを見る番だったが、頓挫したままになっている。これをみて再び「アギーレ神の怒り見なきゃ」という気になった。が、いつになるやら。若いころは名画にいそしんだが、年をとると、重厚なタイトルに食指がうごかなくなるもの──なのだ。

に、加えて映画好き特有の「見た気」てのがある。
──ヘルツォークは人間のあくなき野望・欲望をあつかう。アギーレ役はもちろんクラウスキンスキー。あの怖面。トレイラーでかれは甲冑でジャングルをさまよっている。となるとわたしのような小利口(打算的というような意味、いい意味では使っていません)な奴は、だいたい「見た気」になってしまう──わけである。

富を追い求め冷酷非情にふるまった結果神の怒りに触れてしまったのだろう──と予測する。よしんばそのとおりだったとしても「見た気」は見たことにはならない。だがディズニーは史実や伝承をわかりやすいファンタジーにする。結果、よけい「見た気」になってしまった。のだった。

ところで、ディズニーランドすきですか。わたしはきらいです。行ったことないけどね。そこにジャングルクルーズという乗り物がある──とのこと。
概説に、人気のアトラクションが映画になった、と書いてあった。
たぶん(アトラクションは)ジャングル風に設えた水路を周遊するのだろう。と、ディズニーランドを知らないわたしは予測した。
その予測から(小利口なわたしは)ならば映画は全年齢向けだろうと思った。
ので、さほど見たい気分にはならなかったがエミリーブラントに釣られて見た、のだった。

『アマゾン川は世界最大で最長の河川である。特に流域面積では世界最大であり、2位以下のコンゴ川、ナイル川、ミシシッピ川のそれぞれ2倍程度、オーストラリア大陸の面積に匹敵する705万km2にわたる。1973年から1990年の平均流量は毎秒209,000tと推定される。水深も深く、河口から4,000km上流まで遠洋航海用の船が航行できる。平均水深は雨季で40mである。』
(ウィキペディア「アマゾン川」より)

日本列島よりもはるかに長い河(6,500㎞。日本は約3,500㎞。)が舞台。川つってもイルカがいて潜水艦が航行できる。そのシーナリーは完璧。しっかりお金をかけた手堅いプロダクトだった。

が、映画はまあまあ。クルエラだと大人もたのしめる愛憎の伝奇を内包していたが、これはあくまで冒険活劇に徹していて、その限界を感じた。よくもわるくも全年齢向けに固執していたと思う。とはいえ、文句はない。いうまでもないがヘルツォークより何倍も見やすい映画だった。

エミリーブラントに惹かれて見たが出色だったのはジェシープレモンス。強引で腹黒いのにまったく憎めない敵役。ドイツ帝国の王子──らしいが、おそろしく珍妙な気配。すごく巧かった。

(昔から思うのだが女や子供がディズニーランドを好きだって言うのはわかる。だけど男は、どんなリアクションや態度をとるんだろうか。遊園地だよねディズニーランドって。)