津次郎

映画の感想+ブログ

安心して見られる 家政夫のミタゾノ 第5シリーズ (2022年製作のドラマ)

2022年/ドラマ

https://amzn.to/3mHKFot

4.0
にんげん年をとるとニュースにいちいち「世も末だ」とか「終わってるな日本」とか思うようになる。
それと同じ感覚でつまんないエンタメにたいしてこんなのつくっているようではお終い──と感じることがある。

ドラマの低品質や媚びやあざとさや出演者にたいする嫌悪等々によって見るたび「終わってるな日本」となる。もちろんドラマのクオリティと、日本が終わっているか、終わっていないかは、関係のないことだが、消費者は過剰一般化してそう思うことがある。
──と思う(少なくともわたしには、ある。)

家政婦のミタゾノは嫌にならない希少なドラマ。それが言いたかった。日本製のドラマは(嫌味や胸糞だらけゆえ)嫌味や胸糞なく見られるかどうかが大事。その点ミタゾノは嫌なところが一切ない。

VODが発達した今では国内ドラマのカテゴリの何百というタイトルから見たいものを探すのだが、数のわりになかなか見たいものが見あたらない。たいていタイトル読んで出演者見て嫌になる。(個人的には。)

だが新着のなかにミタゾノを見た時、掃き溜めに鶴を感じた。

新型コロナウィルスが蔓延し、ロシアのウクライナ侵攻がはじまり・・・。
世の状況が変わり、さいきんとくに「終わってるな日本」と思うことが多かった。
どのニュースに反応したかざっくり箇条書きするが──、

サッカー強豪の私学で体罰があったのに大人がぜんぜん出てこない。監督が謝罪したけれどそいつが保身だけの俗物で三文芝居を繰り広げた。「終わってるな日本」と思った。

映画界のセクハラ、パワハラ告発が相次いでいるなか、河瀬直美の文春砲が出た。「撮影スタッフの腹を蹴った」とのこと。映画監督はスタッフの腹を蹴るものなのだろうか。長い間河瀬直美の映画にも言説にも不審を感じていたが、この腹蹴り事件報道で「あーね」と腑に落ちるところがあった。「終わってるな日本」と思った。

プロ野球の審判がピッチャーにたいしてオラつきをしたのに世間の追い風をものともしないNPB。聖隷クリストファーのセンバツ落選のような「組織というもの」の無知と蒙昧と頑迷。「終わってるな日本」と思った。

旭川の凍死事件。第三者委員会が一年がかりで出した回答が「いじめはあった」。あほかおまえら。「終わってるな日本」と思った。

牛丼大手チェーンの常務、社会人向け講座での発言。生娘がシャブ漬けになるような企画と称して、田舎から出てきた右も左も分からない若い女の子を、無垢なうちに牛丼中毒にする──と言ってアウトになった。言っていいことが解らない常務、というよりこの比喩。いったいどんな人間が生娘をシャブ漬けにする──なんていう喩えを用いると思いますか?「終わってるな日本」と思った。

山口県のとある自治体で給付金を誤送信。1世帯に4,630万円(10万円の463世帯分)を振り込んでしまった。が、その世帯主は「もうない返せない」と謎の返答。落とし物や無縁の金を届け出るのが日本人の美徳だった。「終わってるな日本」と思った。

知床の観光船ツアーが遭難した。
2014年、韓国のセヲル号が沈没したとき、その杜撰さに驚がくしたことを覚えている。船は重量オーバー。不適切な改造。故障。船長はまっさきに逃げる。救助も手際が悪く二次災害もおきた。沈没に至るまで、沈没してから、ぜんぶダメダメの対応だった。茶番劇だった。(韓国は)ひでえ国だと思った。
だけど2022/04/23に知床の観光船が遭難して蓋をあけてみると、あながち日本もセヲルの一件を責められないと思った。船は補修されておらず、船長は操船が未熟で、当時は天候も悪かったのに出航している。「終わってるな日本」と思った。

小室夫婦にたいするバッシング。試験落ちたからなんだってんだ。関係ない他人様だぞ。おまえの税金なんぞ一円もつかってないわ。税金払ってる──でドヤることしかできない弱者面の俗物ども、黙りやがれ。「終わってるな日本」と思った。

──思いついたのを挙げただけで網羅性はないが、日本なんて良い国でもないし日本人なんて良い人種でもない。としきりに思ってしまうのは年をとったから──なのだろうか。・・・。なんかさいきんすべてがクソすぎる。

これらのニュースの羅列はミタゾノのレビューと関係がないが、ドラマがはじまってミタゾノが出てきて「みなさまごぶさたをいたしております。まちがいではございません。家政婦のミタゾノシーズンファイブでございます。」と言ったとき一服の清涼を感じた。のだった。それが言いたかった。

タイムリーな話題を扱っているので、ミタゾノみたいな諧謔で現実が打開できたら・・・という一種の逃避ができる。そこがいい。

1話は下妻物語みたいなヤンキーの喧嘩シーンで始まりあたらしいメンバー、もとかりやもとこ(山本舞香)が加わる。

あいかわらず時事問題をチクリとするエピソードで、さいしょまともに見える人々が瓦解しさいしゅうてきに溶け合う進行もおなじ。このシリーズが安心して楽しめるのは松岡昌宏の人間的みりょくにささえられているからだと思う。