津次郎

映画の感想+ブログ

華麗なる レイニーデイ・イン・ニューヨーク (2019年製作の映画)

「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」(DVD)

3.0
アレンの養子だったディラン・ファローの告発によってA Rainy Day in New Yorkはお蔵入りしそうだった。

ハリウッドでは定石だが前妻のミア・ファローは養子を乱受するひとだった。アレンからの性虐待を訴えたディランもそのひとり。アレンの現妻スン=イー・プレヴィンもかつては養子だった。

当時、MeToo運動(2017年~)の気勢にのって、多数の公人が告発された。もちろん今も続いている。MeToo運動とは、告発の連鎖のことではなく、公にさらけ出すことを常態化させた変革だった。

ディラン・ファローが養父ウッディ・アレンからされた過去の性的いたずらを告発したのは二度目。一回目は養母ミア・ファローが訴え、証拠不十分により不起訴となっていたが、二回目は成人した養女本人からで、テレビで大々的に報道された。

それをきっかけに多くの俳優が反アレンに回った。A Rainy Day in New Yorkのほとんどの出演者も出演を後悔したりアレンとは仕事をしないとの声明を発表している。

一方、ヨハンソンやダイアン・キートンなど彼を信頼しいつでも仕事すると公言した俳優らもいた。ケイト・ウィンスレットのように私生活は仕事と関係がないとのスタンスを表明する俳優もいた。

が、MeTooの世相である。
巷は向かい風だった。

マリオン・コティヤールはこの一件を──

『私生活についてはよく知らなかったけど、養女(スン=イー・プレヴィン)と結婚したと聞いて、正直ちょっと気持ち悪いと思ったのを覚えているわ。撮影現場でもどこかギクシャクしていて、私にとってはあまり良い体験ではなかったし、彼と仕事をすることはもうないでしょうね。今回の報道が事実か否かは、当事者じゃないから何とも言えないけれど、ディランさんが苦しむ姿を見て胸が痛くなったということだけは確かね』

──と語ったが、この発言は世間一般見解の代弁のようでもある。

結果、年1作ペースだったウッディ・アレンの仕事はガクンと細った。

思えばウッディ・アレンは半世紀以上一線を走ってきた。
アニーホール(1977)、ハンナとその姉妹(1987)、地球は女で回っている(1997)、マッチポイント(2005)・・・時代毎に多数のピークを持つ名匠であり、かつてはアレン映画の解釈をのたくる文化人や文化人もどきが大勢いた。アレン流のエスプリを解するのが映画通と見なされていた時代が確かにあった。

じっさいウッディ・アレンは長らく映画業界に貢献してきたのであり、突如としてはじまった逆風に不服を述べている。曰く──

『そもそもこれは何年も前に決着している問題であるし、何十人もの女性から訴えられている奴(ワインスタインを指している)と、ひとりの義娘から一回だけのことを訴えられ、その他にいかなる告発の来歴もない私を一緒に語らないでくれ、ほんとに迷惑しているんだ』

MeToo運動もさることながら、本邦のガーシーもそうだがSNS時代とは、告発や暴露によって功績がおしゃかに帰する時代──とも言える。

A Rainy Day in New Yorkは2017年の10月には撮り終えているが、ごたごたの末、公開されたのは2019年。しかも本国アメリカでは公開されずメディアリリースに終わった。

──

映画は軽快なコメディ。撮り方もサクサクという感じ。まるでオーディションリールのように気取らず、構図も決めずに進んでいく。
話もオポチュニズムで主人公がニューヨークを歩いていると知人や有名人に出くわして話がこっちからあっちへとつながっていく。そのいい加減さは悪くないし、男女間の情が出てくるような場面になるとサッと場面転換してスピード感を損ねないのも巧かった。

ただし。上流社会趣味ほど今のじぶんの感情から遠いものはなかったw。