津次郎

映画の感想+ブログ

現実的 PLAN 75 (2022年製作の映画)

PLAN 75

4.0

先日(2023/04/27)ネットに“日本人口50年後8700万人”というニュースがあがっていた。「将来推計人口」の試算によるものだそうだ。

外国人の入国者が増加し、2070年の平均寿命は、男性は85.89歳に、女性は91.94歳に伸び、高齢者の人口は38.7%に上昇する。──とニュースは言っていた。

じっさい、どんな世界になるのだろう。

映画Plan75は75歳で死ぬ選択ができる謂わば姥捨山が法制化された世界を描いている。
若年者は老人の長話につき合い、つつがなく死んでくれるように説得し、外国人は死を看取る。
倫理はともかく「そうならざるをえない」と思える世界でかなり現実的に感じられた。

以前に比べて成田悠輔があまり出なくなったのは「高齢者は集団自決」発言によるものと言われている。
発言は伝播し海外の拒否反応が強かったので日本もそれにならった。人権に触れる問題はグローバリズムに従属せざるをえないからだ。

ただし少子高齢の社会問題にたいして高齢者が死ぬしかないという提案は、たんに誰も言わないだけの姥捨山発想であり、ドライかつ毒のある成田悠輔の特性を知った上で、ネタにされ楽しまれた発言だった、に過ぎない。

言うまでもないが高齢者が集団自決するのは不可能だから。喩えに憤ってどうするの。

ましてこの惑星で唯一無二の特殊な環境にある日本の問題を海外の人権派にいちゃもんをつけられる筋合いはない。

ごく順当に考えて高齢者が死なないなら、じゃああんた、どうやって少子高齢社会に決着つけるんだよ。──という話である。

生きたい人はともかく、75歳で(あるいは何歳であろうと)逝ってもいい人が逝ける世界は、かなり現実的ではなかろうか。

じぶんも誰かや国の世話になる前におしまいにしたい。
そういう制度があったら世話になりたい。(潔いことを言っといてその時になったら生きる気まんまんだったりしてなw。)

早川千絵監督は上手だった。基本が出来ていて悲しい場面をずるずる引きずらない。お涙にしない。日本の映画監督とはぜんぜん違った。

来歴を見て、海外でしっかり映画を学ぶと、悪しき日本映画から抜け出せるのかもしれない──と思った。また(わたしの観相は精度が曖昧だが)早川監督は顔がよかった。

ただし映画Plan75には生きのびる人も死にゆく人も大人しく善良な人物しか出てこない。

現実世界はもっとぐだぐだで、理不尽な人がいっぱいいて、むしろPlan75の世界が丁寧な世界に感じられてしまった。

そこで思うに、この進み具合で人の心が荒んでいけば、政治家が選択制安楽死法案を提唱し国会で通るのは、わりと近い未来のような気がする。

本作はカンヌの“ある視点”をとっているのだが、将来の日本で、少子高齢化は“ある視点”どころか、ほぼすべての因子になる。

そのとき「高齢者は集団自決」発言やPlan75がどんだけ普通の成り行きなのかきっとわかるときが来るだろう。と思った。

倍賞千恵子がよかった。