津次郎

映画の感想+ブログ

正真正銘くそえいが せかいのおきく (2023年製作の映画)

せかいのおきく

1.0

差別を誘発する弁解がましさというものがあります。
汚穢屋は人糞処理をあつかう立派なしごとにちがいありません。が、汚いので毛嫌いされます。しかし下水道のない時代、糞尿汲取人がいなければ衛生を担保できず、堆肥も供給されません。人のいやがる仕事をしてくださっている立派な用務であり、そういう職業を毛嫌いするのは差別にあたるという印象操作へもっていきます。

これは同和ヤクザやクィアベイティングとおなじ方法論で、同和ヤクザというのは部落問題歴史書を持って企業の受付にやってきて、これを20万円で買わなければあなたの会社は部落差別主義者だとわめく商法のことであり、クィアベイティングとは、実際に同性愛者やバイセクシャルではないのに、性的指向の曖昧さをほのめかし、世間の注目を集める手法のことです。

この映画もそんな方法論を使って糞尿汲取人の悲哀を強調して差別を誘発する弁解がましさへもっていく──というわけです。しかも、これでもかというほど、浴びるほどに糞尿を強調します。

けっきょく、われわれ観衆が言いたいのは、たんに──、
き・た・な・い。
──ということです。
ば・っ・ち・い。
──ということです。

是非ではなくわざわざ汚物を見せるなと言っているのです。なんで映画で排泄物を見なきゃならんのでしょう。映画館で見るとなれば巨大スクリーンで排泄物を見るのです。これはいったいどういう種類の拷問なのですか?つうかどういう種類の感性なんですか?

創作物には障害者や病気や貧困をあつかうことで否定しにくくなるものがあります。ただし日本のばあいは戦略的にそれをやるのです。障害をもっているコラムニストや議員がいますが、不利な個性を背負っているばあい、多少変なことを言ったりやったりしても世間から目こぼしされるのです。
かつて日本一ヘタな歌手というのがありその舞台化に際しとある女優さんが抜擢されたものの降板して頓挫したという地味なニュースがありました。ただしこの障害者さんの歌唱を聴くとこの全体像は「察し」です。このようにして日本には負=障害や貧困等を“だし”にしてマーケティングにしむける方法論があるという話です。資金繰りが効率化し辛辣な(直接的な)批評を回避できます。しぬしぬ詐欺の構造と同じです。

この映画では職業に貴賤はないという道徳を盾にしながら糞尿汲取人の悲哀を描いてゆきます。上述したように毛嫌いすることは差別になりますが、じっさいに矢亮(池松壮亮)や中次(寛一郎)に感じるのは、こっちくんなということだけです。その感じ方には是非はありません。コメディにしたい気配がありますが会話なんかひとつも入ってきません。あなたはうんこ味のカレーみたいな話に感興しますか?

なんにせよ、なにがせかいのおきくだよふざけんなということであり、ばかもやすみやすみやってくれということです。見たことも聞いたこともない正真正銘のクソ映画であり、不快きわまりなく、0点というよりマイナス100点、個人的には狂っているとしか思えない映画でした。

海外では見られることがないので評点を形成しないでしょう。いくつか海外評を見ましたが、いずれも概説のたぐいにすぎません。いうまでもなく糞尿を見る・見たいと思うのは少数派です。

知っての通り日本映画のほとんどは誰にも見られないことによって体裁を保っているわけです。

ところで映画芸術という左翼誌が2023年のベストとワーストを発表しそのベスト側の3位にせかいのおきくが入っていました。

『ベストテン
1位「花腐し」(監督:荒井晴彦)
2位「福田村事件」(監督:森達也)
3位「せかいのおきく」(監督:阪本順治)
4位「ほかげ」(監督:塚本晋也)
5位「雑魚どもよ、大志を抱け!」(監督:足立紳)
6位「渇水」(監督:高橋正弥)
7位「二人静か」(監督:坂本礼)
8位「BAD LANDS バッド・ランズ」(監督:原田眞人)
8位「Single8」(監督:小中和哉)
10位「市子」(監督:戸田彬弘)

ワーストテン
1位「月」(監督:石井裕也)
1位「怪物」(監督:是枝裕和)
3位「ゴジラ-1.0」(監督:山崎貴)
4位「首」(監督:北野武)
5位「リボルバー・リリー」(監督:行定勲)
6位「シン・仮面ライダー」(監督:庵野秀明)
7位「正欲」(監督:岸善幸)
8位「波紋」(監督:荻上直子)
9位「レジェンド&バタフライ」(監督:大友啓史)
10位「こんにちは、母さん」(監督:山田洋次』

ご覧のとおり世評ベースで見ますとベストとワーストがまんま入れ替わります。ってことは、こいつらはマジョリティのあまのじゃくを言って、おれらは孤高でござい──って言って自画自賛しているわけです。どんだけキモいガキどもなんでしょう。公共誌面でおなにいすんのやめてもらっていいですか。

こういう権威主義のばかどもが日本を映画後進国にしたのです。花腐しってピンク映画業界を舞台に置き換え脚色した作品だとかでこいつらの頭んなか四畳半襖の下張のまんまで古色蒼然たる昭和の化石監督をもちあげまくりの旬報系の御用記者がこういう独善の井中蛙の評をぶってくるという構造。

なかんずく怪物とゴジラ。海外の受賞作。明確なマジョリティと忖度のない第三者による評価をワーストにあげている時点でこいつらに正義なんかありません。そうやって誰も知らない内輪で孤高気取っている連中が製作や記者にいる以上、日本映画なんかぜったい浮かばれないでしょう。