津次郎

映画の感想+ブログ

テレビ畑の監督は巧い 七つの会議 (2018年製作の映画)

4.0
祈りの幕が下りる時を見たとき福澤克雄は本物ではないかと思ったのだが、テレビ畑の人らしく、本物を裏付ける映画本数ではなかったので、ラックなのかなとも思った。しかし本作を見て本物を確信できた。きょうび日本映画で実力を感じる監督を新しく見いだすのはとても珍しい。とはいえテレビ演出ではベテランであって、演出上の安定感が、はなから段違いである。
余談かつ、ひとりごとだが日本映画には定点が無くてやきもきさせられる。こうして現場でしっかりした技術を身につけた監督が評価されるべきであって、親の七光りや鬼才感でゴリ押される監督の映画はじっさい未熟なものだ。その大衆評価の定点がもっとはっきり顕れていい。マスコミの戦略上のこととはいえ、つまらない映画が盛り上がってしまう必要は全然ないと思う。
福澤克雄は徹底した職人型の映画監督。豪腕の演出力がある。
ひとつ顕著な特徴は挿入される俯瞰がすごく気持ちいいこと。場面転換で田園のエアリアルショットや都市夜景のバルブ撮影が出てくる。それが効果的に話と好奇心をつなぐ。
祈りの幕が下りる時でも感じたが、田舎と都市の対比、上空からゆっくりパンする佳景で、尺を無駄なく乗り切るところに強みと個性があった。
おそらく業界地位も確かな人であって、有名俳優のちょい役使いが散見された。
難点は野村萬斎で、嫌いではないが、ことごとくリアリティがない。うまく言えないがドラマスタイルの演技をしない。まして周りがめちゃ巧い人だらけなので萬斎の狂言的な──というより歌舞伎の見栄のようなキメ顔がやたら浮いてくる。ひるがえって香川照之はじめ共演者を引き立てている、と見ることもできる。違和はあったが妙味かもしれない。