津次郎

映画の感想+ブログ

ニュー・ミュータント(2020年製作の映画)

3.0
物理的面積としても物語の範囲としてもスケールが狭い。
番外編か外伝みたいなおもむきがあり、なんとなく本編をさがした。
なんていうか、マーベルの新作という豪奢な装丁にたいして、あまりにもこぢんまりとした話だった。

異能者の収容施設での実験や謀反があらましだが、ティーンの異能テーマはありがちで、主人公に対し、とげとげしくあたる子とやさしくかばう子がからむ定石も凡庸にうつった。

ところがアニャテイラージョイとメイジーウィリアムズという天資の塊みたいな双頭に、加えBlu Huntという初見の女優が主人公。
この三人が、キラ星のような優性遺伝子で、俳優の魅力によって、映画の瑕疵がまったくもんだいにならないという適例を、この映画は提供してしまっていた。

アニャテイラーは類型的ないじめっこで、憎まれの設定を持ちながら、見る人に憎まれがいっさい作用しないという楽しさ。他二人とは対照的なグラマラス体型で、ぱっつんスキニーなパンツがきまっていた。
攻撃的な性格とミステリアスな雰囲気と変貌する右手、まるで彼女に書かれたキャラクターのようだった。

メイジーは相変わらず世界一魅力的なゲジゲジ眉。つくづく顔だけで食える顔。博愛キャラクターと童顔が合致すると同時に、毛深そうな濃さが獣に変身する異能とも合致していた。
やたらベアバックのショットがある。もちろん振り向かないが、再三ベアバックがあったので、ちょっとだけどきどきした。がっちりした豆腐みたいな背中をしている。
Blu Huntは明解な意志がみえるインディアンな顔立ち。逸材なのは一目でわかった。

監督をみたら、きっと星のせいじゃないで一躍有名になったJosh Boone。おそらくマーベルは、わざとSF門外漢をもってきたのだと思われる。
ただし、たしかに及第な出来だったが、Josh Booneが監督だったからこそ、この映画は大こけはしなかったのだろうと思う。かえりみて、そう思うところが大きかった。

この映画の面白さは、三人の女優がたしかに人間じゃない──と思わせるところ。すなわち、庶民から見たとき、人としての魅力を集約している点において、たしかにMutantsなわけである。
優生思想を公人が言っちゃうと叩かれるのだが、あんがいわたしたち一般庶民は、著名な才人や美人に対して、あんな能力があったら、あんなうつくしさがあったら──と漠然と考えてみることがある。異能テーマは、庶民の「夢見る」ってところを、うまく汲んでいると思った。