津次郎

映画の感想+ブログ

検索すると違うものが・・・ スワン・ソング (2021年製作の映画)

3.3
未来の設定なら未来感をださなきゃいけない。
よく見るのが虚空にあらわれるGUIでそれを手指で操作する表現。

ようするにスマホ画面が任意のばしょに出現しそこからto doするわけだが、それをもって未来ですからね──と言っている映画はとても多いので、わたしとしてはこのGUI(グラフィカルユーザーズインターフェース)の表現が出てくると、わりと白ける。

おそらくホントの未来にはもっと現実的なインターフェースが使われているのではなかろうか。
どこかをタップやスワイプやフリックしているのは映画の中だけの挙動であって、ましてや日本なんてこれから(ますます)老人の国になるわけだから、ピンチアウトする前に老眼鏡かけなさい──という話である。

ちょっと未来──という設定の本作では、ほかにも未来表現がでてくる。列車内販売がボットになっている。echo barという、いかにもありそな栄養補助チョコバーがでてくる。ちなみにキャメロンとポピーの縁はecho barがとりもつことになる。
四輪車は自動運転でいかにも未来的デザインをしている。カメラ機能を備えたコンタクトレンズ。情報とレジャーを提供するイヤホン。フィギュアの対戦ができるゲームコントローラー。こめかみに貼るだけの同期装置。

──そして病気(など)で短命に人生が終わることになった人に替わって、つづきの人生をやってくれるクローンにんげん。
SwanSongは、じぶんの死期をさとり、そのサービス(家族を悲しませることなく、あとはクローンが生きてくれる)を申し込んだ男(マハーシャラアリ)の話。by Apple Original Films。

コンテンツにソフィアコッポラのOn the Rocks(2020)を見つけたときからAppleTV加入しようかな──と思案していた。
で、7日間無料だから、見たいコンテンツが貯まってきたところで入り、7日間以内に解約する見逃げをしよう──と考えていた。

ソフィアコッポラ監督が玉石なのは知っているので、それほどOn the Rocksが見たいわけじゃなかった。でもさいきん年(2021)末ということもあって、そそるタイトルが集まってきた。

NetFlix、Disney+、Amazon prime、HBO MAX・・・VOD群雄割拠の時代なので、AppleTVもフィンチ/パーマー/インベージョン/Dr.ブレイン等等、よさげなタイトルを繰り出していた。が、さほど気持ちは揺れなかった。

揺らしたのはこの映画SwanSong。
監督は本作が長編デビューの人らしいが、惹かれたのは配役。わたしはどうしてもマハーシャラアリとオークワフィナが並んでいたり話していたりする様子を想像できなかった。その呉越同舟見たさにAppleTVに入った。

じぶんとまったくおなじ(クローンにんげん)とはいえ(家族をあざむいて)身代わりに過ごさせる──という道徳的ジレンマと葛藤、および別れの悲しさに主題が置かれた、いい作品だった。
主題に見合った落ち着いたカメラワークで監督より高柳雅暢の功績が大きかったと思う。

個人的にはもっとアリとオークワフィナのやりとりが見たかった。呉越を予測したとおり、ふたりが絡んでいると、妙でいいかんじだった。からだ。
また、いつもの元気なオークワフィナとちがう寂しげなオークワフィナが(すごく)よかった。

見逃げしようと思っていたがプログラムをながめていたら無理だとわかった。いまどき仮加入者を逃すようだったらトライアルなんてしないよな。まあ月600円だし。