津次郎

映画の感想+ブログ

背中にダイオウグソクムシ マリグナント 狂暴な悪夢 (2021年製作の映画)

3.2
やっぱりアイデアだよね──と思った。
かんたんに言ってしまえば「背中のスゲえやつ」ってだけ。
ことばで話されたらそれがどうしたと言うにちがいない話。
なのに、この楽しさ。
加えて主演のAnnabelle Wallisがきれいに撮れている。
ホラーなのに思いのほかきれいに撮れてしまったことでゆうめいな「ルチオフルチのサイキックのジェニファーオニールみたいに」きれいに撮れている。
艶っぽくて、とうてい背中にダイオウグソクムシの裏側(みたいなの)が張り付いているとは思えない。

映画は支離滅裂というほどでもないが、かなり強引に展開する。その、なんとなく安っぽいスピード感もいい。
キャラクターは生き生きしている。人物造形に手抜き感がない。刑事も検視官も性格を与えられている。主人公の妹は、さいしょコスプレみたいなドレスで出てきて「ファミリープラネットのプリンセスなんです」と言う。ようするにテーマパークで姫役をやっている──という設定。この映画にそんなディテールが必要だと思いますか?さすがJames Wan。

忙しい監督がスケジュールの合間につくったみたいなサクッとしたホラーなのだが、Conjuringのようないわば悪魔の住む家的な旧弊な題材を面白く仕上げてきた超職人James Wanだからこその楽しさ=細部が備わっていた。

この背中の腫瘍のアイデアは予算も助かっている。
本作のモンスターは、お面みたいなAnnabelle Wallisを背負って、後ろ向きみたいな動きをすればいいのであって、じっさいガブリエルは後ろ向きとしか思えない動きをしていたし、──つまりこれはモンスター作成費用がいらないってこと。
ハリウッドは世界の映画業界が追従しようとしているところだが、予算だけじゃなくアイデア持っているのもやっぱりハリウッドなわけで。──それを強く思った。

なお妹シドニー役のMaddie Hassonの明るさが映画のブライトサイドを担い躍動につながっていた。気がする。