津次郎

映画の感想+ブログ

全員パラノイド サーヴァント ターナー家の子守 シーズン3 (2022年製作のドラマ)

4.0
カヤスコデラリオとジェシカビールが出てくるThe Truth About Emanuel(2013)という映画があった。
子を亡くした失意/錯乱から、人形をそだてている母親──のところに雇われたナニー、の話だった。

その話にやや似ている。が、Mナイトシャマランが噛んでいるので、いったいどこへ持っていきたいの?という話になっている。それは褒め言葉でもあるが、シーズン化や遷延できる種類の話じゃない。とは思う。

謎や解明を引き延ばしているに過ぎない。という印象は既にある。

ただし、テレビシリーズのばあい、勢いや人気に乗っかると、もはや何をやっても面白い領域に入ってしまう、ばあいがある。
たとえばダイナスティなんて金持ちの愛憎劇にもはや目新しさはないけれどエリザベスギリースが出てくればつつがなく進行してしまう。ダイナスティ見たいわけじゃないがギリースは見たい。──出演者の魅力がシーズンを遷延させる。

『2018年2月27日、Appleが本作の製作を発表した。ショーランナーを務めるM・ナイト・シャマランは、本作はシーズン6まで構想があると述べている。』
(ウィキペディア「サーヴァント ターナー家の子守」より)

いま(2022/02)シーズン3だが、話はすでに飽和していて、新展開になりそうな枝を必死に伸ばしている感じ。とうてい『シーズン6まで構想がある』とは思えない。にもかかわらず、ドラマは面白い。

それはLauren AmbroseとRupert GrintとToby Kebbellの魅力によるものだが、とりわけNell Tiger Freeという変わった名前の女優。

清楚だが謎めいた気配。キリスト教の一派のような鞭打ち苦行をする。大きなストレスを抱え、天使のようでも黒魔術師のようでもある。
そして完全に据わった目の蠱惑。既にブレイクしているのか解らないが、どこまでも行けそうな伸び代を感じる。

ナニー役の彼女とシェフとTVリポーターとその弟の設定。ブタペストホテルのはしこいボーイTony Revoloriも出てくる。登場人物は全員が一種のパラノイドを負っている。その歪みがあらぬ方向へ話を飛ばす。
が、寄り道だらけで、すでにシーズン3にもかかわらず、ホラーなのかスリラーなのか、さえ解らない。それどころか、どこまでも陽性なLauren AmbroseとRupert Grintの姉弟は、このドラマをコメディにさえ見せる。

おそらくシャマランが「つぎはどうしよっかなあ」とか掌(たなごころ)で転がしながら、もてあそんでいるようなドラマだが、何をやっても面白い領域に入ってしまった。と思う。(ところで、どうでもいい余談だが、じぶんは、ながいことシャマランを、シャラマンだとおもっていた。)

追記:ターナー家の地階には100ドル超級ワインが無尽蔵にコレクションされたワインセラーがあります。ワイン好きなら(飲みたくなるのが必至なので)このドラマはお薦めしません。