津次郎

映画の感想+ブログ

ジェームズスペイダーが見つからないぞ アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン (2015年製作の映画)

アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン (吹替版)

4.5
人は人をすきだったり、きらいだったりします。したがって俳優はすきやきらいを被ってしまうものです。

テレビのある居間へ行くと、そこでは親たちが、テレビの誰某にたいして、あらんかぎりのすきやきらいを述べています。それが、お茶の間というやつです。

コンプライアンスやそんたくにまみれた世の中といえども、お茶の間は、絶対非介入の安全地帯です。たいてい、どの家庭にも似たような風景がころがっているはずです。
そこでの発言は門外不出です。
本音だらけのお茶の間が公に漏れるなら、世の中はカオスです。

ところで、ときどき、すきやきらいが、転じることがあります。
じっさい、あまりないことですが、すきだったひとが嫌いになり、きらいだったひとが好きになる──ことがあります。

わたしはむかしのジェームズスペイダーがきらいでした。
若老にふたつの黄金期を持っている俳優です。今がその黄金後期です。

プリティインピンク、レスザンゼロ、セックスと嘘、レイチェルペーパーのころのかれが芳年時代の絶頂期です。
あまいマスクですが、すごくいけすかない奴でした。
じじつ冷徹な印象の二枚目としてヒールをやることも多く、その役柄上の印象が、嫌忌につながってしまっていたのです。これは、世の中よくあることです。

レイチェルペーパーに出ていたアイオンスカイという女優をよく憶えています。東洋人からすると、射る目つきのバタくさい顔立ちですが、笑って歯茎が見えると、あどけなくも感じられるのが素敵でした。かのじょをめぐって、男たちが競合するのがレイチェルペーパーのあらすじですが、ジェームズスペイダーのひとを見下した演技は、それはもう、圧巻でした。

時代が変遷して、経年が彼の頭にも表れたとはいえ、ブラックリストやボストンリーガルのスペイダーは、むかしのスペイダーが嘘のようないい奴でした。
おそらく、かれは意識して二の線を捨てたはずです。
中年太りで、どことなくすっとぼけていて、だけどものすごく理知で鋭い。こんな俳優はどこにもいません。

エイジオブウルトロンを見た後の、わたしにとって最大の疑問は、いったいジェームズスペイダーがどこに出ていたのか──でした。
検索すると、キャプチャスーツを着こんだ彼の製作動画がありました。
ウルトロンです。

それはダウニーJrやエヴァンスやオルセンが、スペイダーを敬服している様子が映されている、とても興味ぶかい動画でした。
first day when he gives his speech at the party i know all of us were kind of eager to be the audience and just to spectate and just watch him perform and its really exciting because it was really good and really intimidating(byクリスエヴァンス)
さいしょの撮影のとき、出演者みんなが彼の演技を熱心に見ていたよ。興奮したね。やたらうまいし、そりゃもう圧倒的だったよ。(雑ぱくな意訳)

あとになってreddit等で海外のコメントを見ていたら、たいていのアメリカ人はジェームズスペイダーがどこに出ていたのかを疑問視していないようでした。声で判るからです。ややエフェクトがかかっていたとはいえ、ジェームズスペイダーを知っているなら、それはもう瞭然の声でした。
わたしは、ああどうしてわかんなかったんだろう──と、ちょっとくやしく思ったのでした。