津次郎

映画の感想+ブログ

モキシー ~私たちのムーブメント~(2021年製作の映画)

モキシー ~私たちのムーブメント~

3.4
ブックスマートのような雰囲気ではじまるのだが、エグいハラスメントにげんなりする。ミッチェルくんというフットボールの主将がBullyなのだが嫌なやつの造形が完璧すぎるゆえ、ムカついてしょうがない。
キャラクタライズにコメディの脱力がなく公民権運動映画のPoor Whiteって感じ。校長も愚挙をぜんぶスルーしちゃっていて、けっこう煽る描き込み──ではなかっただろうか。

が、この導入によって主人公がフェミ二ズムに目覚めていくのがわかるし、方向性は打倒ミッチェルくんに一本化される。要は観衆を味方にするためのプロローグだったが、敵は杓子定規な学校でもある。

去年(2020)のニュースだが、九州の弁護士会が中学校に実施した調査で変な校則の遍在とその内容があきらかになったことがある。
下着の色規制や頭髪や眉毛などに関して、違反者は「下着を学校で脱がせる」とか「眉が生えそろうまで描くこともある」とか「整髪料は発見次第、洗髪させる」とか、が挙がった。
また生徒らへの聞き取り調査によると、校則の理由として教諭から、耳より下に後ろ髪を縛らなければいけないのは「男子がうなじを見て欲情するから」と告げられた──なんてのもあった。

合理性を欠いている──以前にもはやシュールである。
とうぜんそんな校則はアメリカの学校にはない。が、露出が大きいcurvyな女子が「なんか着ろ」と言われて家に帰される──件があった。彼女がそれ(curvyな体つき)を隠せと言われたのは、なぜだったろう?幸い彼女は男性教諭に「(だれかが)見て欲情するから」と告げられた──わけではなかった。
が、女子たちは反撥してタンクトップ縛りdayを敢行する。

世には体勢に反抗してトップレスになる──みたいな示威フェミニズムがあるが、個人的には微妙に思う。男と女はまったくちがう生き物なので、並列するのはムリだし、ポーズなだけのフェミニズムは胡散臭いだけだ。

でも女子生徒たちが、不平等をかんじて、行動するのは、すがすがしい感じがあった。
草創期の女のロックバンドは男社会の荒波を生き抜いたわけだが、それを象徴に置きつつパンキッシュなRageへと昇華している。が、スケートボーダーのセスはいいやつで、校長は女で、たんじゅんな男vs女の構図になっていないのはさすがだった。

母親との葛藤や、応援者だった親友や彼氏を失いそうになる定番曲線を描きながら、うまく着地する。制御されている未成熟。未成熟を描いていることがわかっている未成熟は、楽しかった。
ヒロインらしからぬヒロイン、アジア人、黒人、車いすの子、そのダイバーシティに溜飲のハリウッドバランスがあった。

余談だが、個人的には、もし迫害を受けていないならば、若い人が人権に目覚めることには懐疑的。
馬鹿すぎて詳しく追ってないニュースなのだが、コンビニの「お母さん食堂」という惣菜のネーミングが、食事をつくるのが女性だけというのは偏見に満ちているとかで炎上案件にのぼった──というのがあった。けっこう若い子が声をあげ、(きがくるった)進歩的文化人が迎合した──みたいな展開だったと思われる。(よく知らない。)んなこと言ったら数限りないネーミングを槍玉にしなきゃならなくなるわけだが、それ以前に、若くしてヒューマンライツなんぞに目覚めたら、まっとうな大人になんかなれるわけがない。ぜったいムリです。
こんな衛生無害なリヴィングキッチンみたいな国で、じぶんの権利がおかされていると思っちゃうとか──基本構造が馬鹿すぎる話はどう見たってやっぱ馬鹿です。