津次郎

映画の感想+ブログ

パリ20区、僕たちのクラス(2008年製作の映画)

4.0
母校は学校教師を多く輩出している。
それゆえ同級会などで教職の多難を聞く機会があり、かれらのご苦労を知っている。

教員の不祥事のニュースを見ると怒りがこみあげてくる。が、同窓が苦労しているのを知っているので、相殺して、ばかな教員が教職の風評をいちじるしく下げていること──それを被る真面目な教員を気の毒に思う。

昭和時代に学生だった多くの人がそうだ(と思う)が、わたしも学校教師にいい思い出がない。
わかいころは、すべての教師に憎しみをいだいていた。
が、大人になって、教師になった同窓に話を聞いて、その苦労がわかった。わけである。獣をテイムする作業──ととらえていい。
ゆたぼんやグレタみたいなのが束になっている──と考えると、わかりやすい。

誰でもすべてにおいて正確でいることはできない。
珍獣あいてならばなおさらであろう。

(カンヌの)パルムドールアカデミー外国語映画賞──非英語圏最高の2冠を獲得したフランス映画。

先生が、とても深く介入する教育現場。
おそらく移民の多い特殊な地域・環境であってフランスの学校教育はすべてこうです。──ではないと思われるが、まるで肉弾戦のごとく、先生が生徒に生身の感情をぶつけていく授業は刺激的だった。

さらに驚愕するのは学校の教員会議に、生徒代表がオブザーバー出席すること。
教師が生徒を名指ししながら格付けする会議を生徒が聴取している──って、どれだけ公平な世界なんだろうか。じっさい、マラン先生は、そこでの発言を密告されて窮地に立たされ、さらにその悶着がヒートアップして生徒を売女呼ばわりして、さらに問題化する。──すごい教育現場だった。

映画はリアルでエネルギッシュ。カメラや演出はアブデラティフケシシュのよう。まるでドキュメンタリー。すごく引き込まれた。

日本の教育現場とはくらべようもないが二部や夜間──山田洋次の学校には近いかもしれない。これだけ親身になってぶつかってきてくれる先生だったら、生徒は育つにちがいない──と思わせるが、フランスの学校教育が良いのなら、フランス人はなんであんな嫌なやつばっかしなの──とは思う。(狭いフランス人観ではあるが・・・。)