津次郎

映画の感想+ブログ

Ribbon(2021年製作の映画)

Ribbon

1.1
2020年にどこかの美大の学生が窮状をコマ漫画にしたものを見た。

あこがれて、べんきょうして、ついに美大にはいった──のに、新学期がはじまってから(新型コロナウィルスの影響で)いちども登校したことがない。
通信授業で履修やパソコンの設定に追われた。通学してないのに学費は満額。キャンパスライフがないからともだちができない。相談する相手もいない。

じょうずな漫画で訴求力があり多数の共感(いいね)を集めた。
おそらく見た方もすくなくないだろう。

この映画Ribbonはそんな美大生の失意と不安をくみあげている。
時事に寄せ、とても心やさしい映画だと思う。

ただし基本的に創作において新型コロナウィルスをモチーフにするのはアンフェアだ。(と思う。)
なぜなら新型コロナウィルスはこの惑星のほとんどの住人が被っていることだから。

全員が被っていることを「たいへんなんです」と言うのは、言いたいなら言えばいいが、普通は言わない。
まして創作物ならどうだろう。
変化球にするか副次物にするか、すくなくともそれが原因でこうなった──の根幹要因にはしない。
被害が局地なら、それを報告したり窮状をうったえるのは有りだが、全員なら「たいへんなんです」と言ってしまうと不遜──になってしまう。

畢竟じぶんだけがトクベツだと思っていなければ、新型コロナウィルスを題材にはしない。普通は。

ただしおちをつけなんせにも感じたが、のんは多分「おそろしく無邪気」なひとだと思う。じぶんの身の回りで起こっていることを、とくに深く考えることなく主題としたにちがいない。映画にもその無邪気があふれている。

よしんばじぶんだけがトクベツと思っていたにしても、じっさいにのんはトクベツな女優だ──とも思う。こんなひとはふたりといない。

そんな無邪気と悪意のない優越があらわれている映画で、力も技量もないが、いやみがなかった。
のんがつくりのんが演じているとぜんぜんつまんないのは置いてもまったくいやみがない。ふしぎなひとだ。

日本映画にはいやみを感じることがおおい。よって日本映画であるなら「いやみがない」はポイントを加算できる。
じっさい、これを見た人のほとんどが映画のクオリティについては酌量/容赦しているであろう──という世評になっていた。
そんな人を魅了させるカリスマがのんにはあると思った。