津次郎

映画の感想+ブログ

どっちらけ ハンガー:飽くなき食への道 (2023年製作の映画)

1.5

中華鍋のあおりだけは上手な屋台飯屋の子が高級の洗礼をうける話。

克己主義の料理長から「ダメだ!やりなおし!」てなぐあいにド根性論できたえられる陳套な展開。

映画/ドラマにでてくる厨房でかならず星一徹と飛雄馬が罵り合いをやっているのはそこが厳しい世界なんだぞと言いたいから。だがじっさいは修羅場からエンタメ性を抽出しているに過ぎない。リアリティ番組で喧嘩が勃発したときの感じor“虎”でかりそめの成功者が出資希望者をくそみそにこきおろす感じ。

ただそれ以前にキャラクターもコンポジションも心象も斜めでつかめない。
欧米韓の妥当な映画/ドラマに慣れていると辻褄からズレているものが気に障る。
料理長の暴君が酷すぎて刺されるところはもはや笑った。なにやってんの、このひとたち。

高級に寄せていることも現代からズレていてTiktokerやYoutuberに見られる街屋台で一流シェフより稼いでいる人は大勢いるだろう。貧乏人がまずいものを食ってると思うのは時代錯誤で、そもそもタイには世界に冠たる食文化が花開いているにもかかわらず、なぜものの価値のわからない泡沫な金持ちに高級を提供しなきゃならんのだ──という話。

料理も調理もつっこみどころ満載で、経験ある人ならなおさら。厨房でタバコを吸い、見つかって怒られるシーンがあり、高級のレベルがはかりかねるし、被っていない頭から髪が料理に混入するであろうことは必至だった。

映画は曲折をへて、クオリティオブライフ(実際的な充足感)として元の屋台に戻ると結論するのだが、フラグによってそうなることが始めからわかるし、けっきょくきみは何をしたかったのという感じで全体が転倒していた。

ご存知かもしれないがタイのCMで検索すると感動的なのがいくつか出てくる。なぜあれを長編化しないのか──と思う。