津次郎

映画の感想+ブログ

お隣と音鳴り おと・な・り (2009年製作の映画)

おと・な・り

4.0

よかった気がする。

ちかくに居て、なんとなく好き合っているのに、ぜんぜん会えない男女を描いた映画だった。
Wikipediaによるとキャッチコピーは『初めて好きになったのは、あなたが生きている音でした。』だそうだ。

だけど現実的に考えると、うすい壁ごしの隣人に好ましさを抱くなんて有り得ないわな。

余談だが名古屋のボロアパートに住んでいたとき、じゃらじゃらという隣人がいた。命名したのはおれだけど。じゃらじゃらした鍵の束を腰に下げ、動くとじゃらじゃら音がするからじゃらじゃらでバブル時代はチェーンかなんかで携帯やらアクセサリーやらを腰回りにじゃらつかせておくのが流行っていたんだ。そいつは夜職でGTO(むかしの三菱のスポーツカー)に乗っていて明け方にエキゾーストノートぶるんぶるん言わせてアパートの全員を起こす勢いで帰ってくる。で、じゃらじゃら言わせながら錆びのはなはだしい階段を一段飛ばしで登ってくる。そのとき(誇張ではなく)アパート全体が揺れる。そんで自室の扉を開き凄まじい勢いでバシーンと閉めるんだ。女と一緒のときもあって女は隣人13号に出ていた吉村由美みたいなかんじだった。アパートもちょうどあんな感じだった。毎朝そのけたたましいルーチンがあって、じぶんはそいつの直隣じゃないのがせめてもの救いだと思っていた──ことがあった。

──という話をしたのは、赤の他人の隣人がたてる音なんて嫌悪や憎悪の対象でしかないから。

なのに映画は隣人という関係性をロマンチックに語って説得力があった。もちろん岡田准一と麻生久美子だから──ってこともあるけど。

同じくWikipediaに『タイトルは「お隣り」であり、音が鳴るという意味の「音鳴り」でもある。』とあり、お互いが隣の物音に、好ましさを感じている様子が描かれていた。

個人的にはこの映画のふたりめの岡田、岡田義徳が印象的だった。かれは麻生久美子にサイコパスな感じでまとわりつく変人だったが、ねじ曲がった様子が表現されていてうまいと思った──のを覚えている。

谷村美月もでていた。池内博之が演じた“シンゴ”を探して、岡田准一のところへ勝手に上がり込む。騒がしい谷村美月はいい感じだった。

岡田准一がかっこよくてアパートの風合いもいいかんじ。会えないけれど繋がっている気配が表現されていて、すがすがしい映画だった。カルトではなかろうか。

さらにWikipediaに『ストーリーに絡む挿入歌にはっぴいえんどの「風をあつめて」が採用されている。』とあった。
挿入歌っていうより登場人物が鼻歌する感じ。
ちなみに風をあつめてはJosh Turner Guitarのカバーバージョンがいいですよ。