津次郎

映画の感想+ブログ

般若 スマイル (2022年製作の映画)

スマイル

4.5

また新たにホラーの異才があらわれたという感じ。

ニンマリで固まると怖い──をみごとに映像化していた。
かえりみるとニンマリで固まると怖い──は誰もが認知している不気味さなのに、それがモチーフになった映画をはじめて見た。気がする。

空気に味があった。ミッチェルのIt Followsを見たときのような楽しさ。撮影も精妙。Sosie Baconもすごくじょうず。(ケヴィンベーコンの娘さんだそうな。)
ジャンプスケアのタイミングも絶妙で裏をかかれた。

(ホラー慣れしているとフェイントのフェイントくらいまで読める。たとえば人物が鏡に向かって歯を磨いている。とする。口をゆすいで吐き出すために前屈みになったとき鏡にでるのがふつうのジャンプスケア。それだと読めてしまうから何事もおこらないショットを2、3度撮してからドンとだすわけ。ホラー慣れすると、そのフェイントもまあまあ読める。──という話。)

この映画では裏をかかれて椅子から転げ落ちそうになった。が、ジャンプスケア以上に空気を満たす上質ホラーの芳香に魅了された。

プロットはリングやIt Followsにも通じる呪いの連鎖。
呪われると笑顔のまま人前で自害する。それを見たものに転移し連鎖していく。主人公は断ち切る方法を探るが、呪いを誰かにうつすしかないことを知る。・・・。

呪われているとはたからは狂っているようにしか見えない。
まわりはぜんぶ日常、たったひとりで非日常をかかえてしまったローズ(Sosie Bacon)の演技がすごくうまくて、面白さを根幹で支えていた。
父親の背中を追って子役からやっているそうだ。
血は争えないね。

U-Nextでは本編と同時に元ネタになったLaura Hasn't Sleptというショートフィルムが見られる。
主人公が眠れないという話で、スマイルとはほとんど似ていない。そのことが原石を長編化することで宝石にしたという感じがして興味深かった。

ところで怖い笑顔というものが何に似ているかというと(能面の)般若。
まず無表情をつくり、そこから口角をこれ以上ないほど上げ、ちょっと眉根をよせる。
・・・あれ、笑ゥせぇるすまんになっちまったw。