お笑い芸人の千原せいじ氏(55)の番組「せいじんトコ」にて、せいじ氏がゲスト出演した戸田市議河合ゆうすけ氏(44)と言い争いになり炎上している。
言い争いとはいえ、言葉数もロジックも河合ゆうすけ氏が圧倒し、千原せいじ氏は拗ねた高校生のように要領を得ない悪態で弱々しく反駁することしかできなかった。
その収録の帰り道、まだ怒りおさまらぬ河合ゆうすけ氏は自身の番組でライブし『千原せいじがもうほんまにマジで腹立つわアイツマジで』と思いの丈をぶちまけた。
河合氏は、千原氏が川口市や蕨市の外国人問題に興味がなく、たんに間近にせまった選挙に乗じて再生回数の伸ばそうと話題の政治家をゲストに呼んだに過ぎないと論難し、リアルタイムで寄せられるコメントの発信者たちもバカ扱いしていたと指摘した上で、せいじ氏の対応を次のように分析した。
『あいつはね私から言われてびっくりしたんだと思いますよ。で、アイツねまあ、そこそこいい歳じゃないですか、もう60ぐらいでしょ知らんけど、でね、まあ、もうある意味ね、もう偉そうに自分に対して、厳しく言う人なんて、もういないんだと思うんですよ今、裸の王様ですよ、で私関係なしで言うじゃないですか、ぼっこ~ん言うじゃないですか年下ですけどね、私のほうがだいぶ、多分一回り以上下やと思いますけど、私も関係なしでばっこ~ん言うじゃないですか、びっくりしたんやと思うんですよ、そんな事言われた事ないから、久しく言われてないんだと思うんですよ。
けど僕べつにそんたくする必要なんか全くないから。私べつに大きい政党入ってるわけでもないから、発言に注意しなきゃいけないっていう事もないし、議会でも会派に入っているわけでもないので、会派にそんたくする必要もありません、またですね私は芸能人でもないし、CMがあるわけでもないので、スポンサーにそんたくする必要もありません、だから言いたいことをいいます、ね、でもそういう人間とかれは出会ったことがないやろうから、千原せいじはびっくりしよったんやろなと思います、年下でこんだけそんたくなくばっこ~ん言うやつね、はじめてやと思うんで、もうびっくりしちゃったんやろなと思います・・・』
河合氏の言うとおり、番組はまくし立てる河合氏の隣で、終始鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている千原氏をとらえ、ついぞ見ることのない珍しい絵を提供していた。
個人的にこの一件から転換期のようなものを感じ取った。
わたしたちの日常世界には千原せいじ氏のような、怖い空気感をまとった年配の男がけっこういる。かれらは、過去のどこかで野蛮で荒々しい試練か何かをくぐりぬけてきたのかもしれない。しかし、野蛮で荒々しかったのはその時だけで、そこから短くない年月を平穏に過ごしてきた。はずである。
怖い相手を威嚇するような雰囲気は、その時に身についたのだが、それがパーソナリティに紐付けられ、ことあるごとにその威圧感が、かれにさまざまな優遇措置を提供してきた。つまり丁重にあつかわれてきた。そうこうするうちに『もうある意味ね、もう偉そうに自分に対して、厳しく言う人なんて、もういないんだと思うんですよ今、裸の王様ですよ』という存在になった。
われわれがよく使う「老害」とはまさにこうした人物のことだ。
未経験がもたらす自信のようなものであり、年齢不相応な若い女に入れあげるのも、商業施設の店員に冷たくあたるのもこの手合いだが、未経験に加え、不良時代があると老害が顕在化しやすい。若いころにまとった怖い雰囲気は、経験や体験を謂わば飛び級させるからだ。ほんとうはけんかも強くないし気も弱く確固たる信念をもっているわけでもない。にもかかわらず、かつてまとった怖い雰囲気が、厄介な衝突を回避させた。その都度、高く積み上がった根拠なき自信の座布団にあぐらをかき、やがて一家言ある者として定着する。じっさいに千原せいじ氏は蛮カラで歯に衣着せぬ物言いで人気を博してきたわけである。
かねてからネット(YouTubeなど)とテレビが比較されてきた。田村淳のように今までなんとかメッキを保ってきたテレビ側芸人が、ネットとテレビが融合していくほどに、メッキが剥がれポジションがあからさまになっていく。それは融合であると同時に分断であり、その様相が転換期のように見えた。
たとえば映像のなかにいる可憐な若い女にシンパシーを寄せることがある。ところが彼女は論戦も度胸も老獪な中年男よりずっと強い、ということは幾らでも有り得ることだ。しかしテレビであれば彼女は可憐な顔立ちに見合った、しおらしい性格を偽装するだろう。一方YouTubeなら素を晒して類友を集めていくだろう。オールドメディアとネットのように、両者には相容れないマーケティングがある。
端的に、河合ゆうすけ氏と千原せいじ氏の炎上動画は、テレビ側芸人に「あいつらをナメたあつかいをするとやばい」という注意喚起になるはずであり、そこからネットとテレビのほんとうの転換期、住み分けあるいは共存がはじまる。協調するのか対立していくのかは解らない。ただ転換期になると思えるほど、この動画は刺激的なものだった。