津次郎

映画の感想+ブログ

まゆこい 私は世界一幸運よ (2022年製作の映画)

3.7暴行に遭った女性はその人生がナイフのようなものになってしまう。 かのじょは悪くない。が、恐怖の呪縛から逃れられず、自分自身に箝口を強いて、なににつけ狷介(頑固で人と和合しない)になる。 情緒が散らかりふさぎ込みどんどん自分を追い込んでいく…

わかりたかった ファイト・クラブ (1999年製作の映画)

3.0批評家の評価も高く、世間の評判も良い映画が、じぶんにはぜんぜんだった──ということが、たびたびある。 まえにレビューしたユージュアルサスペクツやアメリカンビューティーはトマトメーターもImdbも高いがわたしは面白いと思わなかった。 ところが映画…

ちゅうけいさん 大河への道 (2022年製作の映画)

5.0 かつて花のあと(2010)のレビューにこう書いている。 『中西健二監督はなぜかwikiもない映画監督ですが青い鳥という名作を撮っています。青い鳥ゆえ、ググったときぞろぞろ違うものが検索されそうなタイトルに難はありますが、個人的にはカルトだと思い…

生理的 TITANE/チタン (2021年製作の映画)

3.3たとえば園子温や蜷川実花のバイオレンス/グロテスク描写に恐さを感じない。過激化は彼/彼女の“どや”を絵にしたものだ。すげえだろ──と見せられる絵にすげえはない。 Julia Ducournau監督のバイオレンス/グロテスク描写は恐い。“どや”がないのはもちろん…

老いてなお X エックス (2022年製作の映画)

3.3Ti West監督はホラー専門で2001年からキャリアがある。目立ったポジションではなかったが、本作Xで注目され、続けてPearl(2022)の成功によって、あちらでは今、時の人になっている。 概説によると、Pearlは悪魔のいけにえ(The Texas Chain Saw Massacr…

きれいな姉妹 シスターズ (2022年製作のドラマ)

4.0かねてから韓国は整形大国と言われている。日本人はそのことを揶揄してきた。が、テレビ、YouTube、Tiktok、映画、メディアの中の日本女性は今やかなりの確率でいじった顔をしている。もはや日本と韓国が逆転している。 知っての通り「韓国は整形大国であ…

アル中と娼婦のはかない恋 リービング・ラスベガス (1995年製作の映画)

3.6日本は他の国よりだめ人間・クズ人間を主人公とした映画が多いです。 てことは、わたしたち日本人はだめ人間を主人公とした映画を好んでいるか──と言えば、そんなことはない。と思います。 日本にだめ人間を主人公とした映画が多い理由は、それが好きな監…

華麗なる レイニーデイ・イン・ニューヨーク (2019年製作の映画)

3.0アレンの養子だったディラン・ファローの告発によってA Rainy Day in New Yorkはお蔵入りしそうだった。 ハリウッドでは定石だが前妻のミア・ファローは養子を乱受するひとだった。アレンからの性虐待を訴えたディランもそのひとり。アレンの現妻スン=イ…

かわいそう ブロンド (2022年製作の映画)

2.8ブロンドはJoyce Carol Oatesの小説にもとづくマリリン・モンローの伝記映画です。じっさいの経歴に準拠した話ですがフィクションになっています。 本質的なものをとらえていると感じましたが、不幸な生い立ちに翻弄され、男にもてあそばれ、マスコミに搾…

ボクシングと映画 BLUE/ブルー (2021年製作の映画)

3.2概してボクシング映画が傑出するのは身体づくりが条件となるから。痩せて訓練して撮る──そのプロセスには既にドキュメンタリーの核が備わっている。本作でも松山ケンイチと柄本時生と東出昌大がそれぞれの役者魂を見せてくれる。 個人的に印象的だったの…

グレナジー リベンジ・スワップ (2022年製作の映画)

3.2学園もので陰キャが一軍女子に絡むとマジカルな楽しさがあらわれる。 未通女と小悪魔の組み合わせ──と言ってもいいが、この構造はクルーレスのシルヴァーストーンとマーフィにもあった。ミーンガールズのマクアダムズとローハンにもあった。レディバード…

鬼才感 ニューオーダー (2020年製作の映画)

3.0日本映画界では鬼才や天才は、監督の技量のなさを弁解する言葉になっている。 とりわけマーケティングにおいてはぜんぜんダメな映画さえも鬼才(or天才)などと喧伝される。 鬼才や天才と定義しておけば、観衆にウケなくても、興行にしっぱいしても、おと…

銃社会の哀しみ フォールアウト (2021年製作の映画)

4.5ブレックファストクラブ、クルーレス、ミーンガールズ、ウォールフラワー、EasyA、The Edge of Seventeen・・・アメリカのゆうめいな学園映画を表としたとき、それらの裏となるのはマイケルムーアのボウリングフォーコロンバイン、ガスヴァンサントのエレ…

上げ底 ソー:ラブ&サンダー (2022年製作の映画)

3.6 Disney+を退会していたのだが、のぞいたら期間限定で新規会員が1ヶ月199円になっていたので、また入ってすぐ解除した。あと1ヶ月見られる。低所得なのでサブスクリプションには警戒している。 いま世にはKKO問題というものがあるそうだ。KKOとは“キモく…

ほんとはいいやつ ゴースト・オブ・マーズ (2001年製作の映画)

3.0マーク・ウォルバーグといえば眉を“への字”につりあげる威嚇の表情がいわばキメ顔になっている。 アイス・キューブにもおなじことが言えるが、tedみたいにキャラクターを演じ分けられるウォルバーグにくらべると、アイス・キューブのばあい、怒り眉が貼り…