津次郎

映画の感想+ブログ

韓国映画

続編の法則に埋もれる 新感染半島 ファイナル・ステージ (2020年製作の映画)

2.7釜山行きの続編だが、舞台となるのは感染者だらけの廃都市である。前段で、そこへ行くことになる経緯を描き、主人公(カンドンウォン)がやってくる。 『ヨン・サンホ監督によると、『ランド・オブ・ザ・デッド』、『ザ・ロード』、『マッドマックス』、…

微笑ましい がんばれ!チョルス (2019年製作の映画)

3.8チャスンウォンが印象に残っているのは拍手する時に去れ(2005)という映画。 拍手する時に去れは韓国映画の常連俳優が多数出演していたが、主役はそこで初めて見たチャスンウオンだった。濃い風貌が男っぽく、好印象だった。限られた空間内で複雑なプロ…

痛ましくて辛い ソウォン 願い (2013年製作の映画)

4.0先般、この映画のもとになった事件の犯人が12年の刑期を終えて出所すると報道され、韓国社会にふたたび脅威をもたらしていた。 個人的な感慨だが、ペドフィリアのような者をなぜ生かしておくんだろう──と、よく思う。 世の中には生きていなくていいサイコ…

おまえはすでにしんでいる エターナル (2016年製作の映画)

3.5imdbを見ると監督はショートを撮っているだけのひとでこれがデビュー作といえる。そういや、はちどりもわたしたちも虐待の証明ミスペクも、パクシネが出ているザコールというネットフリックスでみたやつも、デビュー作だった。韓国映画のばあい、デビュー…

武人と家庭人 コンフィデンシャル/共助 (2017年製作の映画)

3.5ユヘジンといえば、顎前突、厚い唇、はれぼったい薄い目、四角い顔面、低身長、五頭身。民族の標本のような外見で、まず忘れない。なまえを知らなくても、誰でも見たことがある韓国俳優だと思う。ちなみに韓国にはそんなおじさんバイプレーヤーが何十人と…

人間の時間(2018年製作の映画)

2.0少年が、小動物に紐をゆわえつけて、動きに難儀しているのを見て、嘲笑している。残酷だが、幼さでもある。だが、かれはその枷を背負って生きる…… 春夏秋冬~は忘れられない映画だ。うまく言えないが、人の業(ごう)、輪廻が象徴的に描かれていた。 魚と…

二大スター共演 悪の偶像 (2017年製作の映画)

3.5韓国映画/ドラマを支えているのはスピードだと思う。 オンデマンドで、面白そうなドラマをみつける。1話レンタルが200円だとする。まあ、いいか、と思って見始める。2話ばかり見たところで、下へブラウジングしてみる。 なんと、ドラマは150話まである。…

#生きている(2020年製作の映画)

3.0よく思うのだが、ゾンビ映画のばあい、もはや現れるまでが、まどろっこしくて、仕方がない。 ゾンビ映画なのは分かっている。ならば「現れた→たいへんだ」の導入部が、ぜんぜん要らない。と、個人的には思う。 ただし、韓国映画ならば、少なくとも解って…

ノワールなのにコミカル ミッドナイト・ランナー (2017年製作の映画)

5.0コミカルな雰囲気ではじまりますが、事件へ入りこんでいくほどに、シビアな景色が見えてきます。韓国映画の真骨頂だと思いました。 アクションや犯罪者、少女たちの痛ましさはナホンジンのようにシリアス、コメディとノワールで緩急しながら、熱い高揚が…

いじめの克明な描写 わたしたち (2016年製作の映画)

4.0少女がいじめを被る過程が克明につづられていて、つらかった。みごとな描写だった。 大人になって、個人主義をまとってみると、なんでもなくなるが、幼いころは、人のそっけなさに、圧倒されることがあった。 幼かったころ、そっけなさは強さとイコールだ…

サニー 永遠の仲間たち(2011年製作の映画)

4.5知らなかったがカンヒョンチョルはスウィングキッズの監督でもある。寡作だが完全主義で、興行も批評も手堅い。 2011年の本作は大ヒットし各国でリメイクされた。wikiによれば香港、ベトナム、日本、インドネシア、アメリカ──のリメイクがある、または予…

未成年(2018年製作の映画)

3.0しばしば見る俳優だがナホンジン監督のチェイサーの印象が濃い。 俳優が監督に回る──きょうびこの現象には期待がある。とりわけハリウッドのスターはいい映画をつくる。クリントイーストウッド、ポールニューマン、ウォーレンベイティ、ロバートレッドフ…

長沙里9.15(2019年製作の映画)

2.5じぶんの国を良く描く。だいじなことだと思う。信条が据わっていない若者が、日本軍が悪さをしている戦争映画ばかり見ていると、自己批判的になる──ものだ。たんじゅんだけれど、人が強固な主義主張にいたるに際して、エンタメの影響力は大きいはずである…

激動の時代と思春期 はちどり (2018年製作の映画)

4.51994年の韓国。少女の成長の話ですがその年の聖水大橋の崩壊が映画の到達点になっています。封建的な家族の一員として14歳のウニは抑圧のなかに生きています。家族は米餅を製造販売して暮らしています。裕福とはいえず、学校では疎外され、友情も恋愛も脆…

オムジョンファの魅力 ミス・ワイフ (2015年製作の映画)

4.0オムジョンファは長いキャリアの女優で、ヒット曲をもつ歌手でもあったことから、本国では世代それぞれのオムジョンファ体験があるようだ。日本でいえば松田聖子みたいな感じだろうか。90年代、韓国映画を見はじめたころからいたひとだった。が、まだガガ…

エピックな 猟奇的な彼女 (2001年製作の映画)

5.0衝撃を受けた作品に、映画リテラシーを必要とする意義があってほしいと思う。ことがある。思うと言うより願う──かもしれない。 たとえば、衝撃を受けた作品、人生を変えた作品──と冠して紹介する映画が、なんとなく玄人な価値を持っていてほしい、のであ…

ノワールが似合わないパクシネ 沈黙、愛 (2017年製作の映画)

3.2丸顔。大きい瞳。豊頬。笑っているような口元。そこはかとない割れ顎と、さらにそこはかとない割れ鼻突。神が造形したのか、人が造形したのか知らないが、絶妙の顔立ち。パクシネが嫌いな人なんてひとりもいない。 だが、映画はおそらく消極的だと思う。…

謎めいて怪しい バーニング 劇場版(2018年製作の映画)

4.5韓国と言えば、かねてから整形大国との定見だが、たしかに、やったひとは多いが、逆に素で端正な顔立ちのひとも多い。韓国の映画やドラマを見ていると、それが分かる。その裏付け──というか、漠然とした雑感に過ぎないが、韓国の映画/ドラマでは、子役が…

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)

4.0たぶんD.O.を他の韓国映画で見たことがあると思う。EXOのことは知らない。強い眉。キッとした眼力。みなぎる躍動。アジア枠を超える俳優だと思う。オジョンセはドラマ/映画でひんぱんに見かける愉快な中年俳優。ジャクソンとぽっちゃりの青年は初めて見た…

飛べない鳥と優しいキツネ(2018年製作の映画)

4.0原作はWeb漫画とのことで、おそらくターゲットも若い世代だと思われる。共感がじわじわと拡がって映画につながったのだろう──と思った。 素朴な子を起用していて、効果的なファンタジーが挿入される。善悪を単純化しない。幸不幸の都合調整がなく、安易な…

その怪物から逃げるほうが主役 その怪物 (2014年製作の映画)

3.0動作そのものは知っていたが、それが気になる人が他にもいることを、さいきん知った動作なのだが、若い女性の経口揺動というものがある。ちなみに経口揺動なんて言葉はなく、いまつけた。 死語だが「ぶりっ子」を露呈してしまう動きである。何かを食べる…

元ネタはチャップリンの街の灯 ただ君だけ (2011年製作の映画)

4.5薄幸が鼻につくことがある。湯を沸かす~は薄幸キャラクター総出で押しまくる。個人的には臭すぎて無理だった。 魚とおなじで、その臭み耐性には個人差がある。魚ダメな人は、魚介ソーセージでも無理である。 が、調理には巧いのと拙いのがある。拙いから…

ユヘジンの初主演作 LUCK-KEY/ラッキー (2016年製作の映画)

3.8バイプレーヤーのヘビーローテーションを感じるときがある。なまじっかスター俳優よりもよく見るからだ。とりわけ日本や韓国では頻用と汎用の度合いが大きい。おそらく他の国も、そうなのであろう──と思う。日本ならば遠藤憲一や光石研や山本浩司etcとい…

日本には辛辣だが北には優しい プロミス ~氷上の女神たち~ (2016年製作の映画)

3.3韓国映画に日本/日本人が出てくるばあい、かならず卑劣に描かれる。この映画では、対日本戦で日本人選手がスティックで引っかけて韓国人選手を転ばす。会場はアウェーの青森。解説者が大荒れ。ヤイ、ケセッキァ!真っ赤になって怒る解説者を墨舌チョジヌ…

教科書のような完成度 殺人の追憶 (2003年製作の映画)

5.080年代の韓国。よく知らないが、激動期であったと思う。不人情で、旧弊で、権柄づくで、澱んでいる。ペパーミントキャンディの空気感。陰気な時代の陰惨な事件。暗い。暗いけれど惹かれる。ぐいぐいからめ取られる。恐怖映画と言っていい。迫真だった。 …

感動の名演 それだけが、僕の世界 (2018年製作の映画)

4.2ハリウッドでも活躍するビョンホンが市井の人を演じている。もちろん俳優だから役作りしているわけだが、日本の俳優だとここまでリアルな庶民にはならない。ましてニの線で来た俳優なら事務所が蹴ってしまうかもしれない。 ビョンホンはその日暮らしの自…

共感できる表現力 虐待の証明/ミス・ペク (2018年製作の映画)

4.2母親からの虐待とそのトラウマから自棄的に生きる女性が、虐待を受けて傷だらけの近所の子供を助けようとする。実話に基づいているらしいが、そうは思えないほどドラマチックに展開する。底辺に生きる者たちの息吹がリアルで、すんなり共感した。役者が巧…

いきなり短刀FPS 悪女/AKUJO (2017年製作の映画)

3.7冒頭、Hardcore Henryのようなファーストパーソンシューターゲーム画面風のPOVシーンがある。短刀による接近戦でド派手、血糊も多く、迫力にのけぞった。主演のキムオクビンは多細胞少女(2006)という映画を覚えている。コミックが原作。貧乏クンという…

梨泰院クラスキム・ダミの出世作 The Witch/魔女 (2018年製作の映画)

3.6設定も無敵の少女もなんとなくどこかにあるような物語なのだが、抜け出してくる迫力があった。韓国映画には、なんというか、ここまでのことはしないでしょ──を、してくる底力がある。と、同時に、俳優にこんなことはさせられない──を、させてくる魅力もあ…

しっかり怖いPOVホラー コンジアム (2018年製作の映画)

4.0POVスタイルが予算をかけずに映画を撮る方法だとは解る。ブレアウィッチから、とりわけアメリカではPOV画面を見ただけで辟易するような濫造の時期があった。落ち着いたのは、アイデアが出尽くしたからだろう。また、そもそも予算をかけずに撮ることがPOV…