津次郎

映画の感想+ブログ

日本映画

Ribbon(2021年製作の映画)

1.12020年にどこかの美大の学生が窮状をコマ漫画にしたものを見た。 あこがれて、べんきょうして、ついに美大にはいった──のに、新学期がはじまってから(新型コロナウィルスの影響で)いちども登校したことがない。通信授業で履修やパソコンの設定に追われ…

“おひとりさま”という欺瞞 私をくいとめて (2020年製作の映画)

3.4ほとんど見ない女優(のん)なので、珍獣を見ているようなおもしろさがあった。 心の声が聞こえるファンタジーだが黒田さん(のん)と多田くん(林遣都)が接近していく感じはけっこうリアルだった。 はじめからほのぼのした空気&コミカルなので、おひと…

Strange Circus 奇妙なサーカス(2005年製作の映画)

1.0昭和平成の世代で人気女優だった宮崎萬純さんを覚えておられる方も多いと思う。きりりとした宝塚男役のような顔立ちで売れっ子女優だった。その復帰作が奇妙なサーカスだった。復帰するにせよ、なんで園子温で復帰するのだろう──と疑問に思った記憶がある…

Baby you can ドライブ・マイ・カー (2021年製作の映画)

4.3原作は未読ですが映画のために構築された──となっていました。 『村上春樹の同名小説「ドライブ・マイ・カー」より主要な登場人物の名前と基本設定を踏襲しているが、同じく村上春樹の小説「シェエラザード」「木野」(いずれも短編集『女のいない男たち…

豪腕な演出 白ゆき姫殺人事件 (2014年製作の映画)

5.0日本映画をこきおろすことが多いですが例外もあります。テレビ出身の職人型監督と是枝裕和、中島哲也、李相日、原田眞人・・・工匠なタイプの監督は敬愛しています。中村義洋監督もそうです。 判断基準は演出力です。演出家が演出がじょうずであることは…

声優選びに疑問あり 竜とそばかすの姫 (2021年製作の映画)

3.3細田守は宮崎駿や新海誠にならぶすぐれたアニメ作家だと思っていますが声優の配役には多少疑問がありました。 わたしは田中裕子のエボシ御前や美輪明宏のモロ小林薫のジコ坊、木村拓哉のハウルも倍賞千恵子のソフィーも敬愛していますが、細田守のばあい…

きほんてきにキムタクはかっこいい マスカレード・ナイト (2021年製作の映画)

4.0テレビ業界と映画業界があって、じぶんがよくけなす「日本映画」は映画業界に属している──と思っています。 テレビ業界のひとたちも映画をつくりますが、それらは映画業界のひとたちの映画よりもずっとクオリティが高い──と思っています。 じぶんだけでな…

アニメ版 ジョゼと虎と魚たち (2020年製作の映画)

3.0ジョゼと虎と魚たちは田辺聖子の短編小説です。わたしはけっこう映画を見ますがしょうじき読書量が少なく原作を読んでいる映画は稀です。が、これは読んだことがあります。 (わたしは田辺聖子の熱心な読者ではありませんが)田辺聖子は芥川賞も吉川英治…

修羅場芸 捨てがたき人々 (2012年製作の映画)

1.0ユーチューブにじぶんのしゅみに合った動画が並んでいますか? 『ユーチューブのホーム画面に出る動画は、あなたの再生履歴や検索履歴などのデータから、あなたの興味がありそうな動画を判別し、出現させています。』──とのことですが、ほんとですかね。 …

え?ハインラインの?マジで? 夏への扉 ―キミのいる未来へ― (2021年製作の映画)

1.0ハインラインの夏への扉を愛読していました。わたしだけ。──なわけがありません。せかいじゅうで、多少でもSFをかじったことがあるひとなら、これがどれほどの名著か、くちを酸っぱくして語るにちがいありません。 もちろんこんにちでは、古典のようなポ…

もうすぐ死ぬだけど佳作 ラブ・ストーリーを君に (1988年製作の映画)

3.6この映画は佳作とされている。なぜそうなのか説明したい。(しろうとの見解に過ぎません。) 『松田優作主演による一連のアクション作品の脚本で知られる丸山は、ニューシネマが好きで、最初に薄汚く屈折した青年と、はねっかえりな少女に設定を変えて脚…

両手に笛木優子と牧瀬里穂 ジャンプ (2003年製作の映画)

4.0明瞭に覚えている。VODにあったので懐かしく見た。 検索したら監督は竹下昌男という人で、これ一本しかなかった。言わなくてもいいことだが、日本映画界では持ってない監督には仕事がめぐってくる。持っている監督は埋もれる。そんな傾向がある。(と思う…

ずっと独身でいるつもり?(2021年製作の映画)

1.0まず第一に男が全員ばかに描かれていてアンフェアです。その時点でもはやあれだけど80年代みたいな古い話だし都市の独身女の憂鬱ってそんな深刻じゃない。楽しく自由に生きている人たちを、なんかものすごく背負ってるみたいに描かないでほしいなあ。「ボ…

カラフルですね Diner ダイナー (2019年製作の映画)

1.0写真のことは知りませんが、監督は写真家を兼業しています。スタジオで被写体を据えて撮る写真家で、ストリートや自然や報道などの写真は見たことがありません。すべてが人物や花などをコラージュした写真です。極彩色に盛りますが、独自性はなく、この人…

妙味 偶然と想像 (2021年製作の映画)

3.5日本映画に「海外で大絶賛!」というキャッチコピーがあっても、具体性やプライズの内訳がないばあい、それはフォックスやワーナーやUIP(など)の海外映画部のアジア担当のバイヤーさんがとっても気に入ってくれた──ていどの話だと思われます。(憶測で…

ハワイとは何か 50回目のファーストキス (2018年製作の映画)

3.5福田雄一はどちらかといえば放送作家/劇作家だ(と思う)が、映画監督にいたる来歴が、日本の大多数のいわゆる映画監督とはことなるので、日本映画の系譜につらなっていない。個人的に「日本映画の系譜につらなっていない」には価値と意義がある。 大洗~…

きほんてきにすべて東京&業界 ボクたちはみんな大人になれなかった (2021年製作の映画)

1.5 挫折というか平和すぎて挫折らしい挫折もできなかった。という話。深刻ぶってみるけれど、かれらが乗り越えなければならなかった壁は足下にあって、ひょいとまたげた。まして今とちがってバブルを生きた人たち。コロナもコンプライアンスもなかった。恋…

あの夏 深呼吸の必要 (2004年製作の映画)

4.0おそらくだれもが、映画やドラマの出演者や配役をみて「なんでこのひとが」と疑問になる。ことがある(ひとがいる)にちがいない。 「なんでこのひとが」を身も蓋もなく具体的に言ってしまうと「なんでちっとも魅力のないかれ/かのじょが(またしても)こ…

砕け散るところを見せてあげる(2021年製作の映画)

1.0むかしからよく見る英字4文字の監督。(ちなみにこの名前見るたび同じ音のゲイ雑誌思い浮かべます。)長いキャリアだけど演出はへた。しかもみょうに賞に媚びたアートな作風。幸福の鐘蟹工船MissZOMBIE天の茶助・・・お粗末さにそぐわない気取り、なんか…

はるヲうるひと(2020年製作の映画)

1.0佐藤二朗が原作、脚本、監督を担当し、出演もしている。著名人にたいしてがっかりしたと言う人がいるが、いみがないと思う。が、がっかりした。佐藤二朗の笑いにはツボる。だから、なんとなく洒脱なものも期待して見たのだった。ぜんぜん違った。ただのザ…

好ましい癖っぽさ 神様のパズル (2008年製作の映画)

4.0素人なりに誰某の演技がどうの/こうのと言ったりする。ところで俳優の演技はうまくなければならないもの──だろうか? というのも、演技をどうの/こうの言うわりに、演技力に定評のない俳優に魅力を感じることがある。から。演技がうまいからその俳優が好…

蒲田行進曲じゃないよ 蒲田前奏曲 (2020年製作の映画)

1.5出演の松林うららによれば『本作の構想について、松林は「自分の半径5mにある話、自分が疑問に思ったことを表現できないかなと思った」と語る。』とあった。(映画ナタリーより) わりと明瞭に本気で思ったのだが、日本映画がダメなのは、映画を目指す人…

かわいそうで釣る 沈まない三つの家 (2013年製作の映画)

1.0この監督はしぬしぬで日本中を熱狂させた湯を沸かすほどの熱い愛のひと。しぬしぬドラマの構造はシンプルでありながら、日本国民を入れ食いにできる。構造つっても露命を主役に置くだけなんだが。釣れる釣れる。とはいえ、日本人にしかウケないので日本に…

色つきが新鮮 ももいろそらを カラー版 (2020年製作の映画)

4.0日本映画をザ日本映画と称して貶すことがありますが、ときどきじぶんの見識が具体性に欠けていると思うことがあります。(もちろん素人が勝手なことを言っているだけなので、どうでもよろしいことですが・・・。) 「ザ日本映画」にいくらかの具体性を付…

ばるぼら(2019年製作の映画)

1.0人を生かしめる才能のひとつに生まれがあると思います。それは正に才能です。わたしたち庶民は、生涯を通じて、生まれも才能のひとつである──ということを、どうにか呑み込める寛容を持てるにんげんになれるように努力を重ねています。 このひとが監督し…

夏、至るころ(2020年製作の映画)

1.0海外では、俳優が監督業へまわると、いいしごとをする。がんらい、映画をつくりたいと思っているひとが、俳優として業界へ入ってきたのなら、彼/彼女が、まっとうな監督になるのは順当なことだ。 イーストウッド、ニューマン、ベイティ、レッドフォード、…

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(2020年製作の映画)

2.0なにも知りません。鬼滅についていっさい白紙です。はじめて見ました。(無知ゆえ見当外れの可能性があります。) すぐに部分的な話だと解ります。 たとえばスターウォーズのどの映画を見ても、尺のなかで起承転結するので、部分的であることが気になりま…

ブランドが大事 ラストゲーム 最後の早慶戦 (2008年製作の映画)

2.7最後の早慶戦がこんにちまで語り継がれるドラマとなっているのは、それがワセダとケイオウの話であるからに他なりません。でなければ歴史の隅に追いやられ、何十年も経て映画化されることは有り得ないでしょう。 無関係のにんげんにとって「だからなに」…

うつろいの標本箱(2015年製作の映画)

1.0むかしから教職の欠点として「社会経験がない」ことがしばしば指摘される。日本では義務教育→教育学部を経て、エスカレーター式に「先生」になれてしまう。かれらのほとんどが働いたことがない。働いたことがないひとが、青少年を教育する──わけであって…

こけおどし サニー/32 (2018年製作の映画)

2.0ピエール瀧って、プロパー外で演技未経験なのに、とんとん拍子で、起用頻度の高いバイプレイヤーにのし上がったわけだが、それがなぜなのか──考えてみた、ことがある。たぶん、顔がいいから、だったと思う。世間にはいわゆる「いい顔」という漠然とした定…