津次郎

映画の感想+ブログ

日本映画

お隣と音鳴り おと・な・り (2009年製作の映画)

4.0 よかった気がする。 ちかくに居て、なんとなく好き合っているのに、ぜんぜん会えない男女を描いた映画だった。Wikipediaによるとキャッチコピーは『初めて好きになったのは、あなたが生きている音でした。』だそうだ。 だけど現実的に考えると、うすい壁…

格好悪いふられ方 モテキ (2011年製作の映画)

3.5 昔、大江千里をださいなあと思っていた。洋楽に傾倒していたから余計にそう思っていた。十人十色という曲があってサビが思いっきり十人十色なんだわ。大江千里といえば巻き舌(HOUNDDOGの大友康平みたいなやつ)とは違い日本語をはっきりくっきり、大口…

ローカルな気配 旅立ちの島唄 ~十五の春~ (2013年製作の映画)

3.5 YouTubeの登録が130くらいあるんだがそのなかに是枝三姉妹がいる。沖縄音楽のトリオで更新頻度は低いけれど上手だしピュアな感じがいい。おそらく沖縄には夏川りみや上間綾乃やネーネーズやKiroroややなわらばーのような、あるいはそこまでの知名度では…

ぎゅっとなる きみの友だち (2008年製作の映画)

3.5 むかし見たんだけど、よく覚えている。石橋杏奈はしとやかで、北浦愛が素朴で、吉高由里子は真新しかった。柄本時生はすでに持ち味があって、みんな瑞々しかった。フレッシュなのに石橋杏奈にはすでに巧さと達観があった。 廣木隆一はすきじゃないがこれ…

天然を描く難しさ さかなのこ (2022年製作の映画)

2.0 業界には天然なのか天然キャラなのか──の命題があるが、たいがいキャラなので、じっさいの天然の問題はそこ(真偽)ではなく天然が似合うのか似合わないのかの問題になろうかと思う。 (映画やドラマを撮影しているこちら側(カメラ側)には夥しい数の人…

まったり ちひろさん(2023年製作の映画)

2.0 『元風俗嬢であることを隠そうとせず、海辺の小さな街にある弁当屋でひょうひょうと働く女性。それぞれの孤独をかかえた人たちが、彼女のもとに引き寄せられるように集まり癒やされていく。』 ──という概説読んだだけで、なんか癪にさわった。ので見た。…

わりと強引 沈黙のパレード (2022年製作の映画)

3.3 全員が関わっている気配が察せられ真夏の方程式のように倒叙でもっていく。構造がわかると冷めるが演出は巧い。ただ容疑者Xの献身も真夏の方程式も出来が良すぎたので煎じの感覚が拭えない。なんとなく華や興も欠けていて、吉高由里子や渡辺いっけいの存…

モンスターが雑巾 カラダ探し (2022年製作の映画)

1.5 学園+Groundhog Day+トイレの花子さん。(みたいな)ホラゲ風だが逐一挟まれる愁嘆場がクサかった。 いろいろ言いたいことをやめて一周させると日本のコンテンツお金なさすぎ。物量にショボさが出るのは人材育成をしていないから。人材育成をすると低予…

熱演の空虚 完全なる飼育 etude (2020年製作の映画)

1.0 (ぜんぶ妄想憶測偏見ですが、)日本映画界はポルノ映画の出身者が多いです。その結果ポルノ映画における監督と役者の位置構造が、そのまま日本映画界の監督と役者の位置構造に移行している──のが日本映画界です。 ポルノ映画従事者の内懐は「女優とやれ…

ぜんぜんしのげる顔 マイスモールランド (2022年製作の映画)

2.6(映画が言いたいこととは全く視点がズレているので閲覧注意です。) 衣食足りて礼節を知る。ということわざがある。『生活にゆとりができてこそ、礼儀や節度をわきまえるようになる。』という意味だが、つねづねここに付け加えたいことがあった。 それは…

はやすぎたのかも 大怪獣のあとしまつ (2022年製作の映画)

2.7時効警察がすきな人であれば三木聡はスベるくらいがちょうどいいのは解っているはずだ。というか、微妙or盛大にスベっている有様そのものが三木聡なのであって、根本的に笑いの質がM-1のようなものとは違うことは知っているはず。 ──にもかかわらず大怪獣…

夜に息づく無名の人々 続・深夜食堂 (2016年製作の映画)

3.6深夜食堂のオープニングってなんであんなに胸を締め付けられるんだろうなあ。 深夜食堂のオープニングと言えば車からの景色。ギミックなく移動撮影される宵の歌舞伎町交差点付近。そして鈴木常吉が歌う「思ひで」。 きらびやかで、人がうじゃうじゃいて、…

陽光のマルタ島 コンフィデンスマンJP 英雄編 (2022年製作の映画)

2.9英語がキツかった。 (個人的な抱懐だが)ふだん英語を使っていない人が「かっこよく喋ろうとしている英語」はダサい。 だが日本の俳優は映画/ドラマでかならず「かっこよく喋ろうとしている英語」を使う。 この映画の諸兄やたとえばシンゴジラで石原さと…

漫画を貶めるレベル バイオレンスアクション (2022年製作の映画)

1.0プロモーション用の画像に「主演・橋本環奈♡♡♡」とデカデカあった。 ようするにこれはおまえら橋本環奈が出てるんだぞというマーケティングで、このマーケティングに対しておまえらであるわれわれ観衆は「ええっあのひゃくねんにひとりと言われた橋本環奈…

におい立つくささ 川っぺりムコリッタ (2021年製作の映画)

1.0けなしていますのでスキップしてください。 ── 出演者が並んで立っているプロモーションスナップ/イメージってやたら使われてねえか? 意識高い系のアート映画によくあって、たとえば「愛の小さな歴史」と「お盆の弟」ではどちらも光石研が直立し面と向か…

生みの親より育ての親 そして、バトンは渡された (2021年製作の映画)

3.3趣向を凝らした話でお涙頂戴ではなかったが、展開上涙だらけになるので泣けたという好意的レビューも、お涙頂戴だという批判的レビューも少なくなかった。 原作は未読だが、原作者の瀬尾まいこのウィキペディアに──『家族の物語が多いが、愛情を注ぐのに…

錠剤1,000錠 峠 最後のサムライ (2020年製作の映画)

1.5演技者みんな力が入ってて言いにくいのですがあんぽんたんな映画でした。 河井継之助には先見性がありましたが、時代は幕末、開国派と攘夷派が対立していて、そのあいだにも佐幕やら尊王やら、みんながバラバラにこうすべきだああすべきだと言って譲らず…

圧倒的なきもさ わたし達はおとな (2022年製作の映画)

1.0VODの概説に『大人に成り切れない若者たちの姿を圧倒的なリアリティで描いた恋愛映画』とありましたがリアリティをかんちがいしていると感じました。 この映画の「リアリティ」の根拠は①セリフの日常性と②単焦点風カメラと③Awkward(気まずさ)だと思われ…

ちゅうけいさん 大河への道 (2022年製作の映画)

5.0 かつて花のあと(2010)のレビューにこう書いている。 『中西健二監督はなぜかwikiもない映画監督ですが青い鳥という名作を撮っています。青い鳥ゆえ、ググったときぞろぞろ違うものが検索されそうなタイトルに難はありますが、個人的にはカルトだと思い…

ボクシングと映画 BLUE/ブルー (2021年製作の映画)

3.2概してボクシング映画が傑出するのは身体づくりが条件となるから。痩せて訓練して撮る──そのプロセスには既にドキュメンタリーの核が備わっている。本作でも松山ケンイチと柄本時生と東出昌大がそれぞれの役者魂を見せてくれる。 個人的に印象的だったの…

昭和感覚 轢き逃げ -最高の最悪な日- (2019年製作の映画)

1.0感覚が昭和。輪郭をゆるくしてフィルムダメージを入れたら1970年製作の映画──で通る。台詞ぜんたいにそこはかとなく“昔の人たちの会話の気配”が漂ってしまう怪。作為のレトロではなく、感覚に染み付いてしまったレトロ。ある意味、衝撃的だった。 愁嘆場…

下痢注意! ウェディング・ハイ (2022年製作の映画)

1.0披露宴にまつわる人間模様。群像劇で“あるある”ネタを羅列する。 会場/ドレス/テーブルクロス、あらゆる選択にたいする男女の温度差、“クリエイター”になれなかった人間の自尊心を充足させる「紹介ビデオ」の製作、スピーチを依頼された上司らの心理劇、…

“共感性羞恥耐性”を鍛える 子供はわかってあげない (2020年製作の映画)

1.0 さいきん共感性羞恥心という言葉をよく見かける。 ネットには、『共感性羞恥とは、他人が恥をかいたり失敗したりする姿を見て、自分まで恥ずかしくなること。』──と説明されている。 誰にでもある感覚だが、それを感じすぎる場合、HSP(Highly Sensitive…

田舎という地獄 リアリズムの宿 (2003年製作の映画)

4.0遠藤憲一、光石研、大杉漣、田口トモロヲ、寺島進、松重豊が出演するバイプレイヤーズというドラマがあったが、たしかに脇役(byplay)で鳴らしてきた人たちの集まりだったが、かれらはすでに大御所でもあった。それぞれ主役をはったことがあり、脇役だっ…

なんか中二くさい 流浪の月 (2022年製作の映画)

2.5松本は民芸の町。佐伯文(松阪桃季)がやっている喫茶店のように、味わいのある家具や調度の飲食店群がじっさいにも軒を連ねている。とくちょうは無骨。エレガント/華奢/カラフル等とは逆で、どっしりと庶民的、黒や木調の鈍い色合いで、骨太な主張がある…

ほっこりする仮の家族 転々 (2007年製作の映画)

5.0日本映画の課題としてどやの払拭があると思う。どやとは承認欲求のようなものだ。 たとえばテレビドラマのSPECはさいしょのころは面白かった。だが、だんだん疲弊して、やがてあざとさを感じるようになった。 『(中略)一方、今井舞は同じく『週刊文春』…

共通言語としての家族 真実 (2019年製作の映画)

3.4わたしのように過疎な状態のままネットに文を書いていると、ある誤解/希望的観測をすることがある。 売れない人が売れない理由を「才能が突出しすぎているから」と理由付けして、じぶんを慰めることがあるが、それに似て、あまり衆目をかき寄せることがで…

文春砲をカワセるか 2つ目の窓 (2014年製作の映画)

1.0思わせぶり。映画に具体性がないのは、もともと具体的ではないから。「なんかありそう」で持っていくいつもの河瀬映画でした。強迫されながら演じた俳優方々に同情を禁じえません。 とさつは通常スタンさせてから深く喉を切り裂いてしめますが、ここでは…

熱演とクオリティ 完全なる飼育 赤い殺意 (2004年製作の映画)

1.5(憶測に過ぎない記述があります。) さいきん(2022/05)河瀬直美に新たなパワハラの報道があった。先月、自身の映画「朝が来る」の撮影現場にてスタッフを蹴った──という文春砲があったばかりだった。 『(中略)そんな中、主にアメリカで活躍する俳優…

読めない 殯の森 (2007年製作の映画)

2.0個人的に疑惑の映画。昔見たとき「なんかちがうぞ」と思った。あんを見てセンチメンタルポルノの作家だと知ったが、それまでは(この監督がなにかを)持ってるのか持っていないのかが正直わからなかった。当時海外の批評家もほめるのに苦心していたと記憶…